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不正・事件・犯罪 週刊現代
テレビ・新聞が報じない「地面師詐欺」〜ついに明かされた驚きの手口
12億円の被害はこうして生まれた

テレビや新聞ではほとんど報じられていないが、地価の高騰する東京で土地取引をめぐる詐欺が続発している。知らぬ間に土地やカネが盗み取られる地面師詐欺はどう遂行されるのか? 詳細に迫る

 

役割分担された犯行

都心のビルや土地を所有するニセの地主を仕立て上げ、売買を仕組んで買い主から億単位の代金を騙し取る地面師詐欺は、捜査員たちのあいだで「ニンベン」とも呼ばれる。「偽」の字の部首から取られた符牒だ。

1月25日、不動産業者の耳目を集めた地面師事件の裁判の判決が、東京地裁であった。午後1時30分、証言台に立った被告人は内田マイク(63歳)という。

身長180cmほどの長身で、がっしりした体軀の被告人は、丸坊主に近い白髪交じりの短髪に黒縁メガネをかけ、黒いジャケットに赤いチェックのシャツ。一見すると、ラグビーの監督のようないでたちだ。その正体はかつて「池袋グループ」と呼ばれた集団を率い、いまや日本の地面師の頂点に立つと評判の大物詐欺師である。

「地面師詐欺は地価が高騰してきた東京でここ数年、頻繁に起きているが、摘発できているのは氷山の一角。その地面師がらみの多くの事件で、マイクは何らかの足跡を残していると言われています。例の新橋5丁目で資産家が白骨死体で発見された変死事件でも、その名が取り沙汰されています」(警察の捜査関係者)

内田が警視庁捜査2課に逮捕されたのは一昨年11月10日のことだ。容疑は他人の土地の所有権を無断で移し、嘘の登記申請をした電磁的公正証書原本不実記録・同供用など。もう一人の名うての地面師、八重森和夫(逮捕時67歳)のほか、計9人が一斉逮捕された。

内田らはニセ地主を使って東京都杉並区浜田山の駐車場を横浜市内の不動産業者に売りつけて2億5000万円をまんまと詐取。典型的な成り済まし地面師詐欺である。逮捕から1年2ヵ月、検察側の懲役8年という論告求刑に対し、今回下された判決は、「懲役7年」。内田がまぎれもなく犯行の主犯格だと認定している。

地面師詐欺における常套手段でもあるが、犯行は役割分担され、何段階にも分かれた複雑な経過をたどっている。事件を振り返りながら、詐欺集団の組織と犯行のシステムを解剖する。

役割分担された犯行の第一段階は、狙い目の土地を物色し、地主の情報をかき集めることだ。内田たちが浜田山の駐車場に目を付けたのは、'11年5月半ばのこと。論告公判では情報をもたらしたのが、大賀義隆(逮捕時63歳)とされる。内田を知る不動産コンサルタントが明かす。

「内田には女房のやっている浜松町の会社のほか、いくつか事務所があるが、そのうちの一つでは、パソコンで不動産登記を片っ端からあげ、自動車で現場を視察する部隊が常駐していました。そうして成り済ましやすい資産家の物件の情報を常に抱えているのでしょう」

温泉街で仲間を調達

次は、その情報をもとにニセ地主役を仕立てなければならない。浜田山の事件で、そこに抜擢されたのが、渡邊政志(逮捕時72歳)である。

地面師グループは事件ごとにそれぞれの役割を担う詐欺師たちが離合集散を繰り返すが、犯行が成功するかどうか、カギを握るのが、成り済まし役だといっても過言ではない。内田らが選んだ渡邊は検察の取り調べに対し、次のように供述している。

「('11年)6月初めごろ、(共犯で逮捕された)高橋国幹からニセ地主役をするよう指示されました。そこで会ったのが、内田です」

成り済まし役には、本物の地主と年恰好の似た人物を仕立て上げるが、取引現場に立ち会う必要があるので、それらしく振る舞う演技力も欠かせない。どのようにして探し出してくるのか。

「簡単にいえば、グループの中に手配師がいるわけですよ。それが今度の場合は高橋ですが、後ろに大掛かりな手配師のネットワークがあります」

と、先の不動産コンサルタントが話した。

「東京で仕事をする手配師の元締めは、千葉と神奈川にいるとされます。彼らは温泉街に人脈があり、そこから成り済まし役を調達するパターンが多い。千葉の手配師は、北関東の栃木や群馬の温泉地から、神奈川は箱根や熱海などに強みがある。

抜擢されるのは温泉地のコンパニオン派遣会社に登録をしている芸者崩れの中年女性なんかが多い。男女とも過去はそこそこのいい暮らしをしていて、何らかの事情で身を隠して清掃の仕事や風呂番なんかをしている。地方にはそういう足がつきにくい訳アリを束ねているやくざもいて、手配師にはそのネットワークがあるんです」