5年後に国内の4900万世帯(事業所)がすべて超高速ブロードバンドを利用する「光の道」構想は、原口一博総務大臣が日本の国際競争力の維持のため、肝煎りで実現を目指す国家戦略だ。

実は私も、この構想の具体化を議論する同大臣のタスクフォースのメンバーを務めている。そのタスクフォースの公開ヒアリングで、耳を疑いたくなるようなプランを提案する人物が現れた。
日本を代表するベンチャー企業の経営者、ソフトバンクの孫正義社長がその人である。
どう考えても帳尻のあわない作戦を前提に、光ファイバー網を保有する日本電信電話(NTT)グループを分割すれば、未整備の部分の整備も進み、自動的に「光の道」構想が実現すると胸を張ったのだ。
孫社長の主張の矛盾とは何か。そんな発言をした彼の本意はいったい、どこにあるのだろうか。
「政府案を指示」と絶賛
問題のヒアリングは、4月20日に、電気通信事業者6社と業界団体1団体を招致して、東京・霞が関の総務省の地下2階にある「大講堂」で開催された。
孫ソフトバンク社長は、5番目に登場。緊張のせいか、あの人なつっこい笑顔はなく、やや堅い表情で、意見陳述を開始した。
そして開口一番、「政府の構想を支持したい」と声を張り上げて、まだほんの策定段階の「光の道」構想を全面的に支持する姿勢を鮮明にした。これは、スケジュールを遣り繰りして、わざわざ途中からヒアリングに駆け付けた原口大臣へのリップサービスだったのかもしれない。
ちなみに、孫社長がこのとき説明に用いた資料は、総務省のホームページにもアップされているので、是非、一読してほしい。
表紙をめくると、その資料にも、いきなり「『光の道』構想 政府案を支持」と大きく書かれている。
そして、次のページには、鳩山由紀夫首相と原口総務大臣の顔写真が掲載されている。孫社長は、このページを使って、「コンクリートの道から光の道へ」と説いた今年1月の首相の施政方針演説や、原口大臣が3月に検討を指示した「光の道」構想を高く評価する発言を繰り返した。
筆者はこれまでジャーナリストとして、日本だけでなく米欧でも幅広く、様々なヒアリングや意見陳述の場を取材してきた。が、経済人が自国の政府首脳の施策を手放しに賛美するのは初めて見た。たとえば、関東大震災の復興に尽力した後藤新平元内務大臣を「車の道」を実現した政治家として引き合いに出して、原口大臣の「光の道」構想を持ち上げたのである。
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