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日本を襲うであろう「人口減少」という"難題"〜この病理への処方箋
首都圏から見た地方創生【後編】

地方移住、仕事づくり、働き方改革

前編では人口減少社会における、東京一極集中の意味を問うた。ここからは、現在の地方創生の施策の内容を検討してみよう。

いま各地で地方創生の総合戦略が策定されているが、大きくわけて次の三つが主流のようである。①地方移住、②仕事づくり、③働き方改革(ワークライフバランス)。これに④子育て支援⑤地域間の連携づくりを加えれば、国が示す地方創生の全体像になろう。

いま政府が提示しているこれらの施策がはたして人口減少対策になるのか、まずは批判的に検討した上で、なおもそれを進めなければならないとしたら、人口減少対策としてどのような点に配慮する必要があるのかという形で、議論を展開していきたい。

 

①地方移住

政府は年間10万人を東京から地方へと移す目標だという(東京圏への転入6万人減、東京圏からの転出4万人増の計算)。

こうした方向に沿って、全国各地で移住を進める政策がはじまっている。移住対策こそが地方創生だといわんばかりの雰囲気さえある。

しかし、ごく単純に考えれば、移住では人口は増えない。

もちろん、その地区町村のみを考えれば、人が移ってくれば人口増であり、かつそれが子育て世代の夫婦であれば、その地域の出生率もその数は伸びることになる。

しかしながら、それは別の地域のマイナスを生じているので、日本全体としても人口移動はかえって余計な仕事を増やし、マイナスにつながっていく可能性がある。定着できずに行ったり来たりが増えれば、その人自身も出生や子育てどころではあるまい。

地方移住が日本全体の人口増加につながるとすれば、それは次の条件を満たしたときである。すなわち、移住したことによって、産む子どもの数が一人でも多くなった場合である。

むろん、そうしたことを簡単に比較はできない。ただし、この点で少し付け加えれば、Uターンなどで家族や親族など人間関係の豊かな場所に戻る場合には、子どもの数が増える可能性はあるが、Iターンの場合、人間関係で孤立してしまえば、かえって子育て力を失うことがあるかもしれない。

都市部よりは農村部で、首都圏よりは地方で出生力は高いので、地方・農村への移住はそうしたことに期待して進められているのだろうが、人それぞれに実際の条件は違うはずで、農村への移動が孤立につながる人もいるだろう。

また移住は人生において大きな決断なので、その失敗はその人にとって大きな損失になる。実際に移住が行われたとして、それが定着につながるかどうかもわからず、それをただカウントして、移住が多い、少ないなどというのはナンセンスである。

もっとも、こうした議論は、若い子育て世代に限ってのことである。これに対し、子育てを終えた年代の人々の移動(とくに退職後の移動)は、全体として人口が増えるわけではないので、地方移住は人口減少問題とは本来関係がない。

ただし、子育て世代ではなくとも、地方への移住が進み人口が増えれば、その分その地域で消費する量は大きくなり、経済が回復するという論理で期待はできるということであろう。

つまりは人口を移住によって回復することで経済規模を取り戻し、そこで暮らす若い人々の経済力を安定化させるというわけだが、ここでもまた転出された方の経済規模の縮小を伴っているわけで、人口過集中地帯から、過疎地帯への移住でなければ肯定できないことになる。

移住で重要なことは、移った人の数や地域経済規模の回復ではない。人が移動することで、移った人も、受け入れた地域も、そしてさらにはその人を排出した地域も、ともに活き活きとした状態になることである。

そのためには、人口獲得ゲームに陥らず、各地で「一緒に地域を作る・守る」仲間を一人でも多く作り出していく努力をすることがなにより大切になる。