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このご時世に「政府」はいつまで古いOSのままなのか?
絵空事ではない〈未来政府〉のかたち

民主党の牙城、カリフォルニアにて

ギリギリまで本当に就任するのだろうかという疑問の声もあったものの、去る2017年1月20日、ドナルド・トランプが第45代アメリカ大統領に就任した。

すでに新年早々の1月3日から第115期の連邦議会も始まっており、これで昨年11月8日に選出された大統領と議員による新連邦政府がアメリカでスタートした。

ということは、2018年の中間選挙に向けた動きもまた始動したことになる。

その2018年の選挙の話題だが、一つ面白い噂が流れ始めている。

早い段階からトランプを支持した結果、今ではすっかりトランプのハイテク懐刀となった観のあるシリコンバレーの投資家ピーター・ティールが、もしかしたら2018年のカリフォルニア州知事選に出馬するかもしれない、というものだ。

トランプ新大統領とピーター・ティール氏(右)〔PHOTO〕gettyimages

もちろん、仮に出馬したとしても当選するのは容易なことではないのだろうが。

というのもカリフォルニアは今、全米でも稀な州知事・州議会ともに民主党が掌握する州だからだ。そのため、トランプが大統領選に勝利した直後には、カリフォルニアをアメリカから独立させようとするCalexitという運動まで起こる州になっている。

要するに、いまやカリフォルニアは数少ない民主党の牙城の一つなのである。

その民主党のカリフォルニアで、次期州知事の最有力候補の一人と目されているのが、現在副知事を務めるギャビン・ニューサムである。

ギャビン・ニューサム氏〔PHOTO〕gettyimages

ニューサムは、ベイエリアの中心であるサンフランシスコの元市長でもあり、多くのアントレプレナーやベンチャーキャピタリストとの親交から、ITを活用した政府のイメージをすでに持ち合わせている。

その青図が記されたのが彼の著書である『未来政府』だ。

この政府改革の青図をすでに携えているところが、彼のアドバンテージである。共和党員だからということだけでなく、ティールが苦戦するだろうと思う理由の一つでもある。ティールの持ち味であるハイテク分野での優位性がそれほど際立たないと思われるからだ。

ソシャゲーのノリで!

『未来政府』の原題は“Citizenville”。直訳すれば「市民の街」だ。

Citizenは「市民」、villeはフランス語で「市、街、村」のことを指す。英語にはVillage(村)という言葉もあるように、市や街といっても村と大して変わらない小さな街のイメージだ。

さらに、この「村」のイメージとの関わりでいえば、市や街といってもロサンゼルスのような巨大都市ではなく、村のように住人が協力しあって市や町を運営するイメージ、すなわち「自己統治」を実践しているイメージが伴っている。

実は“Citizenville”には元ネタがあって、それはFarmvilleというソーシャルゲームだ。

このゲームは、ゲーム開発会社であるZingaが創業間もない2009年にリリースしてスマフォゲーとして一世を風靡した。むしろ、ZingaがFarmvilleで成功したお陰で、ゲームガジェットしてのスマフォに注目が集まり、「ソシャゲー」という新ゲームジャンルが一般に認知された。そうしてスマフォ市場全体のその後の成長にも一役買っていたのである。

だから『未来政府』という邦訳タイトルは、実はちょっと乙に澄ましすぎていて、原題はもっと遊び感覚に満ちている。ニューサムとしては、いやーソシャゲーのノリで、ポップでクールな街をみんなでつくろうぜ! というぐらいの感じなのだ。

実際、中身もそんな感じであり、ある意味でとてもアメリカらしい、というかサンフランシスコのある北カリフォルニアらしい「市民参加」を重視した都市発展シナリオである。

その意味で、ギャビンの属する現代の民主党らしいITに基づいた、スマートで「クール」なアイデア集だ。トランプやティールの好む重厚長大なデカイ=「グレート」な未来とは一線を画している。