Photo by GettyImages
金融・投資・マーケット 企業・経営 経済・財政 不正・事件・犯罪 裏社会 週刊現代 日本

戦後最大の経済事件「イトマン事件」とは何だったのか?

住銀はあらゆる手でカネをむしり取られた

地上げに観光開発、絵画売買――。闇社会の住人は、あらゆる手で住銀のカネをむしり取ろうとした。なぜ誰も止められなかったのか、そのすべてが明らかになる。

 
イトマン事件/大阪市にあった繊維商社・伊藤万をめぐって起きた特別背任事件。法外な価格での絵画取引やゴルフ場投資を持ちかけられ、多額の資金が闇社会に流出した。伊藤寿永光、許永中、河村社長は逮捕、有罪判決が下った

「天皇の腹心」の暴走

 バブル経済を象徴する経済事件はたくさんありますが、'90年に発覚したイトマン事件が異彩を放っているのは登場人物のキャラクターが際立っているところです。

住友銀行会長で「天皇」と呼ばれた磯田一郎、イトマン社長の河村良彦、暴力団とも接点があったと言われていながらイトマン常務に招聘された伊藤寿永光、在日韓国人のフィクサー・許永中。さながら経済事件のオールスターキャストです。

大塚 確かに多額の借金を抱え最終的に所得隠しが発覚した末野興産や、蛇の目ミシンの株買い占めで罪に問われた光進など、企業が絡んだ事件はあったけど、それぞれ中心人物は1人。イトマンのように主要キャストが何人も登場する事件は珍しい。

國重 イトマンは住友銀行をメインバンクとする中堅商社でしたが、オイルショックなどで経営が低迷していました。

河村さんは'75年に住友銀行からイトマン再建を命じられて社長に就任しました。もともと伊藤忠や丸紅などの商社を担当していた河村さんは、高卒のノンキャリですが磯田さんの腹心とも呼ぶべき人物で、専門商社から総合商社への転換を託され躍起になっていた。

photo by iStock

一方で住友銀行が平和相互銀行を吸収合併する裏で動いたり、銀行の不良債権を引き受けたりと汚れ役を買って出ていました。

その河村さん主導でイトマンは本業とは別の不動産業に手を出し、大金を突っ込むようになりました。大きかったのはイトマン本社を建てる名目で行った南青山の地上げで、合計で1000億円近いカネが動いていた。この地上げを進める際、山口組とつながりのある伊藤寿永光が住友銀行を通じて関与しています。

私は'88年ごろにそういった話を聞くようになり、「イトマンがおかしい。河村さんの暴走を止めないと、住友銀行が大変なことになる」と思った。そこで大塚さんに「イトマンのことを調べてほしい」とお願いして、取材を始めました。