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ライフ 週刊現代

有名企業を退職した男たちが陥る「家庭内管理職」という病

オレが一番偉い、文句あるなら出て行け

会社で偉かったオレは、家でも一番偉いんだ。文句があるなら辞めろ!……じゃなかった、出て行け! 思わずこんな態度をとってしまい、家族に愛想を尽かされる男性が増えている。哀しい実録。

 

孫に対しても「成果主義」

〈同居する父が、管理職だった有名企業を数年前に退職後、家でも管理職のように振る舞い、困っています〉

こう書き出された相談内容を見て、「自分の家のことかと思った」と言うのは、都内に住む40代女性である。

「私の父は、いわゆる五大商社のひとつで役員まで勤めあげ、口癖といえば『オレは同期で一番出世したんだ』なんです。

もう私の子供も上は中学生ですが、毎年正月になると、孫全員を集めて順番にお年玉を渡していくのが父の恒例行事。

問題は、お年玉と引きかえに、子供たちに一発芸をさせるんです。小学生のころはまだ微笑ましかったですけど、中学生の男子に家で『ピコ太郎』を踊らせるなんて、新年会じゃあるまいし……。父だけが喜んでいますが、みんな辟易しています」

40年もの長きにわたって、人生のほとんど全てを会社に捧げてきた。定年を迎えて家に戻っても、退職の翌日から、急に気持ちが切り替えられるはずもない。ついつい癖が抜けず、家族を部下のように扱ってしまう――こんな「家庭内管理職」とも言うべき父親が急増している。

冒頭に引いた読売新聞「人生案内」(1月13日朝刊に掲載)の相談は、父親と同居する40代男性から寄せられたもの。この父親は、管理職を務めていた有名企業を数年前に退職。

今は悠々自適の生活を送っているものの、男性によれば〈意見など言おうものなら、妻や子どもに聞こえるのもお構いなしに、いつまでもネチネチと嫌みを言います〉〈現役時代は一切興味のなかった家事に口出しします〉という。

前出の40代女性はこう続ける。

「意見すると猛烈に怒るところも、うちの父と同じです。この前トランプさんが大統領になると決まったときには『ほら見ろ、オレはずっとトランプが勝つと思ってた』『予想を外した評論家はみんな辞めてしまえ』と言い出したので、私が『そんな言い方ないでしょ、みんな驚いてるわよ』と言ったら『何を言うか!』と真っ赤になって怒り始めた。

内容は関係ないんです。自分の発言を否定されることがイヤでたまらないんでしょう」

役員クラスまで上り詰めると、社長を除けば社内のほぼ全員が部下になる。日ごろ面と向かって意見されることも、まして叱責を受けることもまずありえない。

そんなエリートも、家庭に戻ればただの人。妻や息子、娘が「わかりました!」「ありがとうございます!」と平伏してくれるはずもない。相談に回答した、哲学者の鷲田清一氏は父親の心理をこう分析している。

〈お父上は、会社での「指示―服従」という関係の中で指示者でいた快感が忘れられないのでしょう。その快感がもはや得られないから、家族生活にそれを求める。厄介ですね〉

そして、こう添えた。

〈年がいってから生き方を変えるというのは至難のことです〉