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アメリカ

「下半身論争」を制したトランプの恐るべき会話力

聖書から下ネタまで語るこの男の恐ろしさ

聖書の引用で伝えたメッセージ

日本時間1月21日、米国のワシントンでドナルド・トランプ新大統領が就任演説を行った。日本のマスメディアはまったく注目していないが、トランプの聖書の引用が興味深い。

〈私たちは古い同盟関係を強化し、新たな同盟を作ります。そして、文明社会を結束させ、過激なイスラムのテロを地球から完全に根絶します。私たちの政治の根本にあるのは、アメリカに対する完全な忠誠心です。そして、国への忠誠心を通して、私たちはお互いに対する誠実さを再発見することになります。

もし愛国心に心を開けば、偏見が生まれる余地はありません。聖書は「神の民が団結して生きていることができたら、どれほどすばらしいことでしょうか」と私たちに伝えています〉(1月21日、NHK NEWS WEB)

「神の民が団結して生きていることができたら、どれほどすばらしいことでしょうか」(How good and pleasant it is when God's people live together in unity)という聖書の言葉は、日本聖書協会の新共同訳では、「見よ、兄弟が共に座っている。/なんという恵み、なんという喜び」と訳されている。旧約聖書の「詩編」133編の1節だ。短い詩なので、全文を引用しておく。

〈【都に上る歌。ダビデの詩。】見よ、兄弟が共に座っている。/なんという恵み、なんという喜び。/かぐわしい油が頭に注がれ、ひげに滴り/衣の襟に垂れるアロンのひげに滴り/ヘルモンにおく露のように/シオンの山々に滴り落ちる。/シオンで、主は布告された/祝福と、とこしえの命を〉

ヤーウェ(神)の教えに基づく世界支配はシオン(イスラエル)から広められるという意味だ。ダビデ王を理想としたメシアニズムを典型的に示す内容である。

 

キリスト教徒のみが聖典とする新約聖書ではなく、キリスト教徒、ユダヤ教徒の両者が聖典とする旧約聖書からあえて引用し、イスラエルと全世界のユダヤ人に「私はあなたたちと価値観を共有しています」というメッセージをトランプ大統領は送ったのだ。

トランプ政権の外交は、親イスラエル政策を基調とすることになろう。

フロリダを制したペニス論争

トランプを理解するためには、同人の世界観を正確に把握していなくてはならないが、それが極めてむずかしい作業なのである。トランプについて多くの本が出ているが、この不思議な人物の全体像の解明はできていない。今のところ「ワシントン・ポスト」紙が総力をあげた取材をまとめた『トランプ』が最良の書だ。

本書を読むと、トランプは独自の言語ゲームを展開する才能を持っていることがよくわかる。例えば、2016年2月25日にヒューストンで行われた、トランプとマルコ・ルビオの間でのペニスの大きさをめぐる論戦だ。