Photo by iStock

『蛇にピアス』から14年、2児の母・金原ひとみが描く「姉妹」の形
新作『クラウドガール』インタビュー

金原ひとみさんの初の新聞連載小説『クラウドガール』。奔放に生きる妹と規律正しく生きる姉が共有する、家族をめぐる「秘密」を描いた物語だ。本人に本作への想いを伺った。

姉妹の濃密な関係を描く

―新作『クラウドガール』は、対照的な姉妹の共感と反発、そして家族の秘密にまつわる物語です。ご自身初の新聞連載でしたが、出発点はどこにありましたか。

姉妹を書いてみたかったんです。姉妹のいる友人たちを見ていると、すごく仲がいいか、すごく仲が悪いかのどちらか。私には兄がいますが、お互い空気のような存在です。姉妹の間にある生々しさを、いつか書きたいと思っていました。

自分に9歳と5歳の娘がいることも大きかったです。姉は社交的で妹は人見知り。無意識的に足りない部分を補い合っています。彼女たちを見ていると、ここまで仲が良くても、いつか破綻したりするのかな、と考えたりします。

新聞連載の話がきた時、幅広い層が読むからあまり読む人を選ぶ小説は書けないなと(笑)、でも姉妹の話なら、と思いました。それで、姉が留学先から帰国し久々に一緒に生活を始め、そこに男の人が絡んでくること、母親についてお互いの認識が違うことなど、大まかな設定を決めて書き進めていきました。

―大学生の理有と高校生の杏は、両親が離婚して小説家の母親と暮らしますがその母が死んだため、今は家族2人だけ。この家族の人物造形については?

姉の理有は母親や妹の無軌道さに苦しめられ、理性的に生きようとしている。妹の杏は感情が激しく、ダンスをしているなど身体的にもいつも動いているタイプ。

死んだ母親には明確なイメージがありました。この数年、知人や知人の親類が自殺したことが数回あって。自殺願望を持つ人のなかには、他人が助けたり救ったりできるレベルにいない人がいると実感しました。

 

理有たちの母親も、他人が本質的にかかわることのできない人物というイメージで書きました。作中に彼女の言葉として「小説を書いている時が一番解放されていて、現実に向き合う時ほど絶望している」とありますが、それは私の中にもある感覚です。

父親は会話文の中でしか出てきませんが、モラル面で芯の通ったものを持っていて、理有の理性的な性格を補強する象徴的な存在です。

これまで私が書いてきた男性はムカつく人が多かったけれど(笑)、今回姉妹と関わる男の人たちは割合いい人たちです。浮気性だったり危ういところがありますが、本質的に彼女たちを苦しめる存在ではない。つまり、彼女たちは恋愛以外のところでもがいている。その表明でもあります。

時代の転換点をどう描くか

―これは若い人たちの話でもありますが、14年前のデビュー作『蛇にピアス』の頃の若者と今の若者は違うと思いますか。

蛇にピアス』を書いた10代の頃は、自分も周囲もギスギスしていたし、サブカル、アングラ的なものに惹かれていたように思います。それに対して最近の若者はニュートラルで軽やかに生きている印象があります。杏も激しくて無軌道な子ですが、ある種のしなやかさを持ち合わせている女の子として描きました。

―その杏が頻繁に使っているのがスナップチャット、通称「スナチャ」というスマートフォンのアプリ。これはやりとりの履歴が残らないというのが特徴のツールですね。

隣の人と話している感覚でやりとりできるアプリです。私が今住んでいるフランスでは若者のスナチャ使用率はとても高く、テレビで特集されるほどです。私も使っていて、革命的なツールと思い取り入れたんですが、日本ではあまり浸透していませんね。日本では、じっくり考えて文面を書き、読む方が安心できるのかもしれません。