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Jリーグ放映権を“黒船”に奪われた「スカパー!」の悲劇
ダ・ゾーンが超強気な理由
週刊現代 プロフィール

「背景には、各国でスポーツ賭博のネット化が進んでいることがあげられます。とりわけ政府公認の『ブックメーカー』が賭博を運営する英国では、'00年代に入り、オンライン化が相次いだ。

近年はスマホで試合を見ながら賭けられるシステムが完成されている。それまでは試合前の予想で賭けるしかなかったのが、試合展開に応じて、試合中に変動する倍率を見ながら賭けられるインプレー・ベッティング(試合中の賭け)も盛んになっています」(前出・在欧ジャーナリスト)

そして、何を隠そうパフォームこそは、「ウォッチ&ベット」と呼ばれるスポーツ賭博の運営者に向けた動画配信サービスで急成長した企業なのだという。

「合法賭博用の動画配信のプラットフォームを押さえ、パフォームは安定した収入を得ている。賭博は中毒性が高く、一過性のブームに乗ったファンとは比べ物にならない手堅い顧客を抱えており、極東の赤字ぐらいではビクともしません」(前出・在欧ジャーナリスト)

それを踏まえたうえで、Jリーグ関係者はパフォームの「シナリオ」をこう予想する。

「やはり、10年という長期契約のなかで見据えているのは、日本におけるスポーツ賭博の『合法化』でしょう。日本では一昨年の野球賭博の問題もあり、賭博=悪というイメージがいまだ根強いが、10年あれば風向きも変わる。

あれだけ反対意見の多かったカジノ関連法案も可決したのだから、可能性は十分。将来的に本国と同じようなビジネスモデルを築くための『先行投資』という意味合いが感じられます」

文部科学省が所管するtoto(サッカーくじ)は、3年連続で売上高が1000億円を突破、安定したマーケットになっている。スポーツ賭博の新たな市場として、日本はまさに「格好の的」なのだ。

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野球でも同じことが起きる

こうした支払う側の思惑は別として、Jリーグ側はウハウハの「パフォーム特需」に沸く。なにせ、これまで地上波を合わせても放映権収入が100億円を超えたことのなかったJリーグに、年平均210億円という巨額が転がり込んだのだ。

「さっそく、来季からのJ1上位チームの賞金の増額が発表され、1位のチームには合計で21億5000万円が支払われることになりました。これは、昨季の4億8000万円の4倍以上。

同時に、外国人選手の登録枠を増やすことも決まっている。中国や中東のチームと同じように、欧州の大物スター選手をカネで釣って連れてくることも可能になる」(スポーツ紙・サッカー担当記者)

 

外資マネーの流入が、Jリーグの勢力図に大きな変化をもたらすかもしれないのだ。

さらに、こうした流れは今後他のスポーツへと広がる可能性がある。例えば、野球。

「すでにアメリカでは、メジャーリーグファンがケーブルテレビや衛星放送の視聴契約を解約して、ウェブ配信サービスに乗り換える動きが顕著になっています。

おかげで、代表的なスポーツ専門チャンネルであるESPNの視聴者数は減少の一途。MLB自体が年間1万2000円ほどの加入料で全試合を視聴できるインターネット動画配信サービスを運営しており、これがドル箱になっている。

もし放送局が将来的に放映権料をペイできなくなれば、すべての放送がインターネット中継だけになる可能性もある」(前出・コンサルタント)

日本のプロ野球の場合、例えば巨人であれば地上波中継は日本テレビ、BSはBS日テレ、CSはG+というように、球団と結びつきの強い企業が放送権を持つ旧態依然の状況が続く。だが、いずれそうしたモデルが崩れる日が来るかもしれない。

ダ・ゾーンという「黒船」の来襲が号砲となり、日本のスポーツ界が「文明開化」を迫られる日も、そう遠くはない。

「週刊現代」2016年2月4日号より