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松方弘樹、その規格外の生き様 〜酒豪伝説、女性関係、釣り…

さらば、最後の映画スター!

「神輿が勝手に歩ける言うんなら、歩いてみいや、おう!」。『仁義なき戦い』で松方が演じた若頭の名セリフはファンの心に熱く刻まれている。

酒とマグロと映画を愛した名優をまだまだ観たかった――。

何もかもが規格外

「早く戻ってこいと思っています。俺はここ数年、本当に寂しい思いをしているんだよ。同じ夢を持った仲間が次々に亡くなっている。弘樹は日本の財産だし、いなくなってほしくない。

あいつは名優・近衛十四郎の息子として育ってきたエリートだよ。俺みたいな雑草とは違う。最初は七光りもあったかもしれないけど、見事にお父さん以上に育った。

抜群の吸収力をもっている素敵な俳優。数々の名優がこの世を去った今、弘樹は日本映画界に絶対に必要な男だ」

松方弘樹(74歳)の訃報が飛び込んでくるつい数日前、先輩俳優・千葉真一は悲痛な声でそう語った。

松方は昨年2月から長期療養に入り、もうすぐ1年になろうとしていた。病名は「脳リンパ腫」。10万人に1人と言われる難病である。

脳腫瘍に詳しい立川病院脳神経外科部長の矢﨑貴仁医師が解説する。

「欧米では免疫力が落ちた患者さんに脳リンパ腫の発生が多いですが、日本ではとても稀です。脳のどこにでもできる悪性腫瘍で、脳腫瘍の約3%を占め、近年になって増加傾向にあります。

症状としては知能低下や麻痺などが多いですね。片方の視力が急に低下する眼内リンパ腫が初発症状として多く、その後に脳に発生します。数日から週単位で進行するケースが大半。一度症状が出たら悪化するのは早いと考えるべきで、標準の治療法は抗がん剤と放射線治療です」

 

病魔と闘う松方の復帰を俳優仲間は願ってやまなかった。ヤクザ映画『仁義なき戦い』や時代劇『遠山の金さん』など、役者として不世出のキャリアを持ち、また豪快に遊ぶ最後の映画スターである、というのが、衆目の一致するところだ。

多くの映画で共演した俳優の渡辺裕之が語る。

「あのタイプの俳優さんは松方さん以外にいないでしょう。撮影終わりには、いろいろなところに飲みに連れて行ってくれました。いつも大盤振る舞いで、しかも松方さんが一番お酒を飲んでいました。

京都でかなり飲んだ後に、『今日はうちに泊まれ』と言ってもらったこともありましたね。マネジャーと二人で、京都の自宅(当時)に伺ったら、そこでもまたお酒がでてきた。

当時奥さんだった仁科亜季子さんからは『適当にしときなさいよ』と忠告されましたけど、どうやって適当にするか分からなかった(笑)。

結局、最後は、奥さんが促してくれて、ようやく寝ることができました。ゲストルームで朝起きて、プールでひと泳ぎした後、ダイニングに行くとお手伝いさんが何人も働いていましたよ。出発するための車まで手配してくれていた。本当に、僕たちに何にも気を遣わせないんです。お金に糸目をつけずに、人を楽しませようとする」

差し入れもスケールが違ったという。

「毎日キャストやスタッフに差し入れをしてくれました。高級ステーキ屋『ゆたか』のカツサンドがあったりしましたね。1箱1万5000円もするものが、人数分用意されていた。

さらに、わざわざ設備とスタッフを準備して、美味しいコーヒーをご馳走してくれる。そういうことが自然にできる。それがカリスマ性にもつながっていたのかもしれない」(渡辺)