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企業・経営
20年で売上6倍!浅草の洋品店が100年続いてきた「明確な理由」
社長は『POPEYE』の元編集者
「浅草中屋」の中川雅雄社長

1910年(明治43年)創業の祭用品専門店・浅草中屋。本店は江戸三大祭りにも選ばれる三社祭の地元・浅草神社の目の前にあり、全国に向け半纏、股引、足袋等を販売している。

興味深いのは同社が先進的な販売管理システムなどを駆使し、オンラインショッピングを始め、ここ20年で売り上げを6倍に伸ばしていること。浅草中屋を展開する中川株式会社の社長・中川雅雄氏(62歳)に話を聞いた。

 

流行っている店に倣え

【町人】

浅草寺一帯には昔ながらの商家が多く、今も落語の世界を彷彿とさせる文化が息づいています。まず、だらしないことをすると翌日には町内の皆が知っている。

たとえば私が酔って歩いて歩道の柵にぶつかったら、あくる日、皆から「昨日はずいぶん楽しかったようで」とからかわれましたよ(笑)。皆が子ども時代からの知り合いだから、困ったときはお互いさま。ときには色々な課題も共有しているから、仲間から様々な情報が入ってきます。

また、盆正月も大事ですが、一番多くの親戚が集まるのはお祭りのとき。私の家も、三社祭のときになると、弟や妹が本社神輿を見に戻ってきます。平成の世の中ですが、下町の町人文化が残っているのです。

【着こなし】

当社へ入社する前は、出版社で『ポパイ』や『オリーブ』などのファッション誌を作っていました。浅草中屋の事業を伸ばせたのは、ここでアパレルのビジネスモデルを学んでいたからです。

入社後、私はプロカメラマンの方にお願いして三社祭の写真を撮影、ガイドブックなどをつくる出版社に貸し出しました。掲載されると、「浅草中屋」がクレジットされるので、当社の屋号がブランド化します。そして、ホームページなどで各地のお祭りの情報を提供しつつ、ファッション誌と同様に「中屋が薦めるお祭りのファッションはこれ」「こう着こなせば間違いない」とお伝えするのです。

ファッションを楽しむ側は、着こなしを間違え、恥ずかしい思いをしたくない。だから間違いないブランドの品を、安心して買いたい―ここがアパレルの販売戦略と同じなのです。

【若旦那】

'14年に、中小企業IT経営力大賞を受賞しました。私が入社したばかりの頃は伝票すらなく、先代がうっかり納期を間違え、慌てて私が届けるような状況でした。

そこでITシステム導入を考えたのです。ただし、むりやり進めようものなら、番頭格の社員らに「若旦那がおかしくなったよ」と言われるのがオチ。そこで私はまず、業務プロセスの定型化を進めました。受注から納品まで伝票で管理したのです。

次に、顧客情報や購入履歴をパソコンで管理しました。周囲に「去年と同じものがほしい、とお客様に言われたとき便利でしょ?」と話したものです。同時に「機械にやってもらえる仕事は機械にやらせなきゃ!」とも話し、発送を自動化し、最終的に受注から発送までのサプライチェーンマネジメントを完成させました。

人間は変えようとしても変わりません。でも「流行っている店はこうしてるよ」と変わるべき外部要因を伝え「たしかに便利だ」と思ってもらって内部要因が固まれば、自分から変わろうとしてくれます。今は毎日数百~数千件の受注があります。これをすべて記憶や手書きに頼っていたら、と思うとぞっとします。