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アメリカ
トランプのトヨタ口撃は防げたはずだ!「ロビー活動」軽視の高いツケ
日本企業が学ぶべき教訓

これほど早く「現実」になろうとは……

「『トヨトミの野望』は予言の書なのか?」
「読み返すと怖くなる」
「大企業の経営陣はいますぐこの小説を読むべきだ」――

最近、方々で拙著の評判を聞く。昨年10月に上梓した『トヨトミの野望』は、日本の自動車メーカーの内実と近未来を小説として描いたもので、おかげさまで大反響を呼び、版を重ねている。

本書では日の丸企業がアメリカでのロビー活動をおろそかにした結果、米国市場で存在感を失う様を描いたが、残念ながら、作中で問題提起したことが、トランプ大統領の誕生によって深刻な「現実問題」になりつつあるようだ。

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そもそもの発端は、大統領就任前のトランプのツイートである。トヨタを名指しして「メキシコに新工場建設などとんでもない。米国に工場を新設しろ。さもなければ高い関税を支払え」と恫喝。震え上がったトヨタは豊田章男社長自ら、「今後5年間に米国に100億ドル(約1兆1600億円)を投資する」と明言。事態の収拾を図った。

が、残念ながら、トランプの返事はない。大統領就任後も無視である。

しかもトヨタは大統領選挙の最中に致命的な「失策」も犯している。昨年9月にメキシコ工場(米国国境にある既存工場)への追加投資を発表したのだ。米国で売れ筋のピックアップトラックを造る工場で投資額は1億5000万ドル。いかんせん発表の時期が悪い。

 

トランプは昨年11月に大統領選挙に勝利し、就任まで2ヵ月近くあった。新大統領の政策もある程度は分かっていたはず。トヨタの資力と人脈があればトランプとのパイプなどたやすく構築できただろう。

が、トヨタは無為に2ヵ月近くを過ごし、今日の事態を迎えてしまった。これは経営陣の油断と、ロビー活動の手抜かり以外の何物でもないのではないだろうか。

これは自動車業界に限らず、日本企業全般に言えることだが、昨今のグローバル渉外力の著しい低下は目に余るものがある。グローバル渉外力とは、端的にいえば「ロビー活動」であり、世界の政治・官僚と対等に渡り合い、規制や法制度が自社に有利なものとなるように導く能力のことである。

日本人的な美徳感覚では、ロビー活動を「金権政治」的なものととらえてしまうが、グローバル競争の中では、ロビー活動は当然の行為である。

日本ではロビイストという職業は不明確であり、うさん臭い目で見られがちである。しかし、米国は違う。政府が認めたロビイストによるロビー活動は合法であり、社会的地位も高い。

今回、トランプ砲の攻撃にさらされたトヨタの収益の大半を稼ぎ出す米国は、ロビー活動抜きでは語れない社会である。

米国といえば、市場の門戸は誰にでも開かれ、自由で公正な市場といったイメージが日本ではもたれているが、とんでもない「誤解」だ。業界や企業の利害を代表するロビイストが札束攻勢によって、シロをクロに変えて敵をおとしめ、逆にクロをシロにして我田引水を行う、生きるか死ぬかのシビアな戦場なのである。