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アメリカ 大統領選 メディア・マスコミ

ただのデマが「ニュース」になり、世界を狂わせてしまう時代の恐怖

クリックひとつで一触即発!?

虚偽ではなく「代替的な事実」!?

ドナルド・トランプの世界には、「真実」がいくつあるのだろう?

ついにホワイトハウス入りしたトランプは、さっそくメディアと戦闘態勢に入った。

両者が最初にぶつかったのは、大統領就任式の参加者数。報道では推定25万人だったが、トランプはこれに強く反発し、「150万人いた」と語った(8年前のバラク・オバマ前大統領の就任式の参加者は約180万人だったといわれる)。

さらにショーン・スパイサー大統領報道官は初の公式会見でこの話題に触れ、「就任式の観衆としては文句なく過去最大だった」と強い調子で語った。

トランプ陣営のケリーアン・コンウェイ上級顧問は、NBCテレビの『ミート・ザ・プレス』に出演。司会者から、なぜスパイサー報道官は最初の記者会見で、「ほぼ確実に虚偽である内容を口にしたのか」と聞かれると、コンウェイは「報道官が提示したのは代替的な事実(alternative fact)だ」と発言。

これに対して司会者は「代替的な事実というのは、事実じゃないでしょう。それは虚偽ということですよ」と反論した。

代替的な事実──トランプの下でまた1つ、シュールな新語が誕生した。「fact」は「事実」だ。実際に起きたことをいう。その「alternative(代わり)」とは、いったい何を指すのだろう?

選挙戦のときにも、これに似たトーンの言葉が飛び交っていた。「フェイクニュース」である。「ニュース」はそもそも事実のはずだが、「フェイク」は「偽り」。「偽りのニュース」とは何なのか。

フェイクニュースの正体

ところが、トランプが今回当選した裏にはフェイクニュースが大きな影響を果たしたといわれる。米大統領選の間にネット上で流れた主なフェイクニュースは、たとえばこんな感じだ。

「ローマ法王がトランプ支持を公式に表明した」

「民主党候補のヒラリー・クリントンは、テロ組織IS(自称イスラム国)に武器を売却した」

「クリントンは、トランプが勝った場合には内戦を始めるつもりだ」

そんな驚くような情報がソーシャルメディアにあふれた。驚くのは当然だし、むしろ驚かないとまずい。なんといっても、これらはみんな「フェイク」なのだから。

フェイクニュースとは、簡単に言えば「デマ」でしかない。だが、それがソーシャルメディアなどに載ることで、「ニュース」の体裁を整えて伝わっていく。

 

フェイクニュースは広告収入などを目的に書かれたものがほとんどで、たいていはフェイスブックで拡散される。

米ネットメディア「バズフィード」は大統領選前の3ヵ月間にフェイスブックで最もシェアされ、「いいね!」などの反応が多かった記事を分析した。

大手メディアが掲載した上位20記事へのエンゲージメントは約736万7000件。一方、フェイクニュースの上位20記事については約871万1000件。フェイクニュースのほうが、より広く拡散されていたということだ。

「フェイクニュースが米大統領選を左右した」といわれるのは、こうしてシェアされた偽ニュースの上位のほとんどが反民主党・反クリントンの内容だったからだ。

さらに現在は、アメリカの成人の44%がフェイスブックを通じてニュースに接しているといわれる。

一方で既存のマスメディアへの信頼度は急落し、共和党支持者の間ではわずか14%。保守層にとっては「見聞きするニュースの大半は、フェイスブックでシェアされるフェイクニュース」ということになりかねない。

そんなことを言っても、たわいないデマだろう。ちょっと頭を働かせれば、でたらめだとわかるんじゃないか──そんな声が聞こえてくる。

見くびってはいけない。そうではないようだ。フェイクニュースをめぐっては、発砲事件まで起きている。