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今年、イスラム教徒と西欧社会との関係は「最悪」になる

混迷のイスラム世界に出口はあるか

欧州難民危機が加速させる「反イスラム」

今年は、イスラム世界にとっても、またイスラム世界との関係にとっても、これまでになく緊張の高まる年となるだろう。

イスラム教徒と西欧社会との関係は確実に最悪のものとなる。いたずらに対立を煽るようなことは発言しないが、様々な角度から推測しても、両者の関係が改善する方向性を見いだすことはできない。

最大の懸念は、100万人を超える難民の存在である。ヨーロッパ難民危機と言われた2015年から2年がたったが、実は、難民の受け入れと彼らの行く末はいまだに定まっていない。

膨大な数の難民の流入は、昨年、すでに英国のEU離脱の間接的な原因となった。今年は、オランダの総選挙、フランスの大統領選挙、ドイツの総選挙とEU加盟国では重要な選挙が目白押しだが、どれをとっても、強烈な反移民・難民、反イスラムを掲げる政治勢力が政権を窺う勢いとなっている。

3月に総選挙が予定されているオランダでは、反EU、反移民、反イスラムと三拍子そろったポピュリストのヘルト・ウィルダースが率いる自由党が優勢と伝えられている。日本ではあまり注目されていないが、彼の主張はトランプ氏よりも過激で、モロッコ系移民の追放やコーランの禁書などを主張してきた。

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次のフランス大統領選挙では、極右国民線のマリーヌ・ルペンが有力な大統領候補となっている。時期的には秋になるが、ドイツの連邦議会選挙もある。

メルケル首相個人は現在のところ、安定した支持を得ているが、彼女が難民受け入れで示した毅然とした姿勢は、ドイツのための選択肢(AfD)という政党や、いまや広範囲の市民運動となりつつあるPEGIDA(ヨーロッパのイスラム化に反対する愛国的市民)からの非難に耐えられるか否か、かなり難しい状況にある。

アメリカでのトランプ大統領誕生が、このような排外主義の政治動向に強い影響を与えていることは言うまでもない。選挙のゆくえによっては、EU統合は瓦解する恐れもある。少なくとも、シェンゲン協定によって国境の壁をなくしてきた一つのヨーロッパ構想は、かなりの制約を受けることになるだろう。

 

シリア戦争のゆくえ

当事者の難民に視点を移すと、問題は、シリア、アフガニスタン、イラクなどから流入した難民たちが、ヨーロッパ諸国に定住するのか、それとも母国に帰還するのか、その見通しがまったく立っていないことにある。

2015年に難民が殺到したとき、難民と呼べない人びとが、経済的な上昇を求めて「移民」としてこの奔流に混ざった。少なくとも、チュニジアやモロッコ、それにアフガニスタンから来た人々について、ドイツ政府は難民認定をしない方向を示している。