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驚きに満ちた日本列島100万年史〜大地に刻まれた壮大な物語を読む
移動する琵琶湖、海に沈む東京…

伊豆半島衝突、富士山噴火、海に沈む東京・大阪・京都、消えた縄文文化、移動する琵琶湖、瀬戸内海をナウマンゾウが闊歩する──
驚きに満ちた日本列島史!

なぜここに坂があるのか

私事で恐縮ですが、私の家の近くには滝坂(たきざか)という大きな坂があります。私は生まれてからずっとその坂の下にある家で育ちました。

しかし、あるときまで、なぜここに坂があるのかとか、どうして坂ができたのかなんて考えたこともありませんでした。私にとっては坂にしろ崖にしろ、空気と同じような存在で、その地形の意味や形成された理由に気を留めたことなどなかったのです。

ところが、大学に入学して貝塚爽平(かいづかそうへい)先生の著書『東京の自然史』をベースにした自然地理学の講義を聞いたとき、目の前がぱっと開けました。

この坂は、国分寺崖線(がいせん)という、地質時代に多摩川が作った河岸段丘(かがんだんきゅう)の縁の崖(段丘崖)を甲州街道が乗り越すためのものだったのです。

祖父から、「この坂は滝のように急だったから滝坂という名が付いた」と聞いていました。また、近所の人の話では、荷車を引く人にとって滝坂は甲州街道の難所で、昔はその名が甲州方面でも知られていたそうです。

しかし、なぜここに坂があるのか、ということはまったく考えたこともありませんでした。ところが、これらの話と国分寺崖線の話がつながって、私は自分の知識が一気に拡がった気がしたのです。

新しい知識とそれまでとくに意識していなかった日常の経験がリンクして、私は崖や坂の存在理由や意味が初めて理解できました。

単なる知識ではなく、学問がいろいろな情報や経験とつながって、立体的な知識となって自分の生活の中で活きてくることを強く感じました。理解するというのはまさにこういうことなんだ、と私自身が初めて理解でき、学問の楽しさが感じられたのです。

想定外の出来事に備えるために

このように、地形がどのように、そして、どうしてできたのか、という地形の成り立ちや成因を知る学問を地形発達史といいます。私は、地形発達史から地形研究の面白さを知り、それを調べて、さらに人に教えることを生業にしてきました。

しかし、それが続けてこられたのは、単に土地のでき方に興味がある、面白いからというだけではありません。

 

私たちが目にしているありふれた景色(地形)も、私たちがまだ経験したことのないさまざまな作用や力が働いて作られてきたものなのです。

その成り立ちや歴史を知ることで、過去にどんなことが起きていたのかを知ると同時に、将来どんなことが起きる可能性があるのかという未来の予測も可能になるのです。

そういう知識があれば、万一、大地震や洪水などで想定外の事が起きても、私たちは混乱したり絶望したりすることなく、生き残るために適切な対応の道を探ることができると思います。

また、地形のでき方を知っていれば、地下の地質を(もちろん地表に関連する比較的浅い部分ですが)を推定することもできます。

もしあなたが、どこかで土地を購入しよう、あるいは利用させてもらおうとするとき、大がかりな事前調査をしなくても、地形を見ただけでおよその形成の歴史や地下の様子が分かります。購入や建築の際の判断材料を得ることもできるのです。

幸いなことに、最近はタモリさんが出演するテレビ番組「ブラタモリ」などのおかげで、地形を見てそのでき方や発達史などに興味を持つ方が増えてきました。

本書では、そのような方々のお役に立とうと、日本各地のさまざまな地形がどのように作られてきたかを分かりやすく説明していきます。日本列島の成り立ちを単なる紙の上だけの知識ではなく、それぞれの経験に照らしながら理解していただこうとするものです。

著者 山崎晴雄(やまざき・はるお)

首都大学東京名誉教授。(株)ダイヤコンサルタント顧問。一九五一年東京都生まれ。東京都立大学大学院理学研究科地理学専攻修士課程修了。通産省工業技術院地質調査所主任研究官を経て、東京都立大学教授、首都大学東京教授を歴任。理学博士。著書に『活断層とは何か』(東京大学出版会、共著)、『第四紀学』(朝倉書店、共著)、『富士山はどうしてそこにあるのか』(NHK出版)など。
著者 久保純子(くぼ・すみこ)

早稲田大学教育・総合科学学術院教授。自然地理学・地形学専攻。一九五九年東京都新宿区生まれ。早稲田大学教育学部卒、東京都立大学大学院理学研究科地理学専攻修士課程修了。博士(理学)。著書に『日本の地形・地盤デジタルマップ』(東京大学出版会、共著)、『日本の地形4 関東・伊豆小笠原』(同、分担執筆)など。
日本列島100万年史
大地に刻まれた壮大な物語

山崎晴雄=著
久保純子=著

発行年月日: 2017/01/20
ページ数: 272
シリーズ通巻番号: B2000

定価:本体  1000円(税別)

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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)