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エンタメ 週刊現代
大晦日「ガキ使SP」圧勝でわかった3冠・日本テレビの「企画力」
斎藤工、松下由樹らが舞台ウラを明かす

「ドリルせんのかい!」上半身裸で叫ぶ二枚目俳優・西岡徳馬に大笑い。浅野ゆう子が自虐ソングを踊りつきで歌い、「この大物がそこまでやるか」の連続。タレントの力ではない。これは作り手の力だ。

斎藤工、松下由樹、原田龍二、石井竜也ら「大物ゲスト」が番組の舞台ウラを次々に証言。

視聴者の予想を超越する

「企画書の段階では他にも演出プランがありました。他の演出プランは、僕のパブリックイメージの延長線上にあるものや、僕自身想像できるものでした。いずれも台本は練られていたので、もちろん形にはなったと思います。

ただ固定された路線から脱皮したいという気持ちがあったんです。提案してくれたスタッフさんは本当に素晴らしい。この番組の強さは、視聴者を笑わせようとしているんじゃなくて、出演者の5人を本気で笑わせようとしていることにあると思います」(ゲスト出演した俳優・斎藤工)

昨年の大晦日夜に放送された日本テレビ『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで 大晦日年越しSP!! 絶対に笑ってはいけない科学博士24時!』は、まだまだテレビこそが、最大の娯楽であることを見せつけた。

同番組は'06年より毎年大晦日に放送され、ダウンタウンをはじめとするレギュラーメンバー5人の前に次々と「笑いの刺客」が登場。メンバーが笑ってしまうと、尻叩きのお仕置きを受ける。

6時間の特番でNHK『紅白歌合戦』の真裏ながら、視聴率は第1部が17.7%、第2部が16.1%を獲得(関東地区)。他の民放各局にダブルスコアの大差をつけて圧勝した。さらに『紅白』にも肉迫していたという。

 

「『紅白』の視聴率は第1部が35.1%ですが、50代以上の視聴者が6割以上。13歳から59歳までの視聴者層にかぎれば紅白の視聴率は18.3%、一方の『ガキ使SP』第1部は16.6%で、視聴者層の7割は50代以下、つまりスポンサーが望む若者やファミリー層に支持されている。視聴率が筋肉質で、無駄がないんですよ」(広告代理店社員)

分刻み視聴率を詳細にみると、『紅白』と『ガキ使SP』の視聴率は反比例している。

『ガキ使SP』を見ながら、好きなアーティストが出演するときだけ紅白を見るというスタイルが、日本の大晦日に定着しつつあるのである。

日テレで宣伝部長を務め、現在は九州産業大学教授の岩崎達也氏が語る。

「日テレは企画優先主義なんです。番組のメインターゲットを徹底的にリサーチして企画を作り、それに合わせてタレントを使うということ。

『ガキ使SP』でも恒例のネタは残しつつ、西岡徳馬さん、斎藤工さん、原田龍二さん、松下由樹さんがまさかそこまで、というレベルの企画をやった。あの番組だから、ということもありますが、とことんこだわるところが日テレらしい。

視聴者も映像コンテンツを作って発信する時代になり、中途半端なものでは驚かない。視聴者の予想を超える面白い企画やまさかのストーリーが重要なんです」

かつてはフジテレビをはじめ、有名タレントの出演OKをもらってからタレントに阿るかたちで企画を考える手法でヒットが生まれたが、視聴者が成熟した現在では通用しない。今年の『紅白』も大物歌手の起用ありきで視聴者不在という感が否めなかった。

お笑い番組に詳しいライターの戸部田誠(てれびのスキマ)はこう語る。

「『ガキ使SP』は、大晦日なのにカウントダウンすらしない。生番組にするより、クオリティを高める方向に舵を切ったんです。タレント頼りの番組が多い中で、作り手の顔が見える数少ない番組だと思います」

同志社女子大学教授(メディア論)の影山貴彦氏も言う。

「作り手の縦横無尽さがすべてというわけではなく、出演者も楽しんでいる。そのバランスがいまの日テレを象徴しているのではないでしょうか」