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ハチイチ世代の旗手・山口絵理子が愛され続ける理由

新たな挑戦で見えた強さの秘密

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」

創業10年目を迎えた株式会社マザーハウスが掲げている企業理念である。

バングラデシュとネパールでバッグやストールを生産し、現在、日本、台湾、香港の29店舗で販売。出店の勢いは止まらず、成長の一途をたどり続ける。さらに、2015年にインドネシア、2016年にはスリランカでジュエリーの生産を開始し、予想を超える売上を伸ばす。

なぜバッグで成功したのに、はじめての国、はじめてのジュエリーという商材で、リスクを取り挑戦を続けるのか。そして、なぜ代表兼デザイナーである山口絵理子さんはハチイチ世代の旗手として学生や社会人から愛され続けているのか?

山口さんが7年ぶりに綴った新刊『輝ける場所を探して 裸でも生きる3』では、その理由が明らかになる。山口さんに、話を聞いた。

マザーハウス代表兼デザイナー 山口絵理子さん

腰の重い人にはチャンスは降ってこない

─山口さんの講演会には、その海外での経験談を聞きに、若者が殺到しています。一方、山口さんのように、海外に出ていく若者が少なくなりました。

山口:なんらかの原体験が海外であるかないかというのは、その後のキャリアに大きな影響があると思っています。

異文化の人と仕事をして自分の価値観が広がったり壊されたりした経験のある人は、怖さを感じても、それを乗り越えて、また海外に出ていけると思います。

私の場合で言えば、22歳から24歳までバングラデシュで暮らし、そこで経験してきたことがとても大きい。もちろん行くだけじゃなく現地の人と何かをした経験が必要です。そうした経験をする人が減っているのかな、と思います。

─途上国を舞台に挑戦することに、怖さはありませんか?

怖いと思う気持ちはわかります。私自身、楽しいという思いだけで行っているわけではありません。しんどいと思うこともあれば、怖いと思うこともあります。現地の空港に着いてもすごく緊張しています。

ただ私は、現地に入って作業がはじまると怖さを忘れてしまいます。ものを作る喜びとや達成感が私の感じる幸せに直結していて、僅差ですけど、緊張を上回るのだと思います。

─やりたいことを見つけられない、見つけてもカタチにできないと考えてしまう人は多いと思います。

山口:新刊『輝ける場所を探して 裸でも生きる3』を読めばわかってもらえると思うのですが、ジュエリーをやるとか、スリランカに行くとか、あらかじめ決めてからインドネシアに向かったわけではありませんでした。動きながら次にやりたいことを探していったのです。

大事なのはフットワーク軽く動いていくこと。腰の重い人にはチャンスは降ってきません。動いていれば多様な情景を見ることができるし、いろいろな情報も入ってくるようになります。その中でやりたいことを見つけたり、カタチにする方法に気づいたりしていくと思います。

本の中に出てくる職人さんたちも、がんばる方向性を少し変えただけで挑戦する舞台が広がっていきました。

丁寧に作るということだけが職人のゴールになりがちですけど、少し状況を俯瞰して、どこにチャレンジする先を持っていけばいいか考えてみると、次のやりたいこと、カタチにする方法が見つかるのではないか思います。