© VERTOV SIA,VERTOV REAL CINEMA OOO,HYPERMARKET FILM s.r.o.ČESKÁ TELEVIZE,SAXONIA ENTERTAINMENT GMBH,MITTELDEUTSCHER RUNDFUNK 2015
北朝鮮 エンタメ
ニュースで流れない北朝鮮の「真実」〜美女軍団がジャージ姿で恋バナ
渡航10回のジャーナリストが見た!

台本のある「ドキュメンタリー」

真実をカメラに収めることを志すドキュメンタリーの作り手であれば、おそらく誰もが強烈に惹かれる国が、北朝鮮だ。北朝鮮は、取材者にとって足を踏み入れることが困難で、トップへのアプローチは難攻不落。登山家にとってのエベレスト的存在の難所である。

外国人、特にジャーナリストやドキュメンタリストの入国は厳しく制限され、入国できたとしても取材中は「案内人」という名の当局者の監視がつきまとう。基本的に決められた場所で、決められたことしか撮影できないのが北朝鮮なのだ。

……という話を読んだり聞いたりしたことがある人も多いに違いない。だが、北朝鮮の国営放送はもちろんのこと、日本のテレビやドキュメンタリーでも案内人の存在が堂々と映し出されることはなく、当局によって制限された撮影の実態についても明かされることはなかった。北でドキュメンタリー撮影を試みた人のみが、その事実の詳細を知り得るのだ。

そんな北朝鮮の“リアルな日常”を白日のもとにさらすことに成功したのが、映画『太陽の下で-真実の北朝鮮-』だ。表向きのテーマは、平壌の金星学院という学校に通う8歳の女の子ジンミが、北朝鮮で最も権威ある青少年団体のひとつである朝鮮少年団に入団し、金日成の誕生日「太陽節」の公演を準備する過程と、ジンミの成功を祝う親やその職場の人たちを追ったドキュメンタリー。

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序盤では、日本の植民地時代についての歴史の授業で「敬愛する金日成大元帥様は仲間に『日本人と地主は我が人民を苦しめる悪者だ』とおっしゃいました」とすらすら答える優等生のジンミや、たまご、餅、ソーセージ、キムチなど10種類のおかずが並ぶ夕食の様子が淡々と映し出される。

ところが、食卓を囲む親子の会話のシーンから、カメラは俄然北の真実に切り込んでいく。

「たくさんキムチを食べなさい。キムチは朝鮮固有の民族料理だ。1日に200グラムキムチを食べて、汁を70ミリリットル飲めば1日に必要なビタミンの半分を摂取できる」と諭す父親に対し、「知ってるよ! 老化防止とガン予防にもなるよ」とうんちくで切り返す賢いジンミ。

次のカットは再び「たくさんキムチを食べなさい。キムチは~」と同じやりとりを繰り返す父娘。また次のカットも「たくさんキムチを~」とまったく同じ会話。その次のカットは、よほど何度も撮り直したのか、だんだん日が暮れて暗くなる室内に「アクション!」と、まるで劇映画さながら撮影監督が指示する声が響くのだ。さらに、休憩時間に家の片隅で台本らしき紙の束を読む父親の姿まで、カメラは赤裸々に捉えていく。

なぜドキュメンタリー映画に台本があるのだろうか。