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つかこうへいの「素顔」に迫る傑作本 風間杜夫「人生最高の10冊」

「本は背伸びする材料です」
俳優の風間杜夫さん

つかこうへいの素顔

読書は自分の人生に重なっていると思うんですが、今となっては内容がうろ覚えなものも多いんです。だから、今回の10冊はその中でも、もう一度じっくり読んでみたいというものを挙げました。

1位は『つかこうへい正伝』。つかさんには学生演劇に参加している頃に出会ったんですが、長くつかさんの傍にいた長谷川康夫が書いたこの本のおかげで僕も平田(満)も知り得なかった当時のつかさんの真の姿がよくわかりました。

単につかさんのことを持ち上げる内容ではなく〈人たらしで、僕らはまんまとあの人の魅力の毒牙に引っかかった〉とか、〈利にさとい人〉ということも率直に書いているんですね。なのに、全体としてはつかさんに対する愛に満ちていて、読み物として非常に面白い本だと思います。

僕もつかさんには散々ヒドいことを言われましたけど、やっぱりすごい才能の持ち主だから、つかさんが面白がっていることを傍で一緒に面白がりたかったんですよね。

 

ただし、9位の『つかへい腹黒日記』に書かれていることなんてほとんど嘘っぱちですよ。たとえば、僕はつかさんとキャバレーなんか行ったことないし、ましてや女の子の太ももを2人で奪い合ったこともないんです。

だけど、この本の中に描かれている僕のほうが断然面白いわけ。だから、書かれていた通り、キャバレーで女の子の足を触ったりってことを後追いしてやってみたことも(笑)。今思うと、どんな暴言を吐かれようが、つかさんと過ごした時間は楽しかったし、僕の一番熱かった時代でしたね。

2位の『敗れざる者たち』ですが、僕がまだまだ俳優として人に知られていない頃、NHKの朝の連続テレビ小説『雲のじゅうたん』で共演した竜崎勝さんに勧められた本です。

内容は、長嶋茂雄がいたがために消えていったプロ野球選手といった、いわゆる勝負の世界に賭けて敗れた人たちの姿を書いたノンフィクションなんですね。でも、沢木さんの目は温かくて「決して彼らは敗れちゃあいないんだ」とある。僕はそんな沢木さんの人に対する眼差しがとても好きなんですよね。

3位の『罪と罰』は高校生の時に読みました。主人公の大学生が強欲な老婆を殺すわけですが、そこには「なぜ殺しても構わないのか」という理屈が通っている。

僕らは学生運動が盛んな頃の世代ですから、それこそ「日本を良くするためにはテロも辞さない」みたいな雰囲気があったんです。ただ、一方では「目的が良ければどんな手段をとっても正当化されるのか」とも思っていた。特に演劇を志向する人間は常にその辺のことを考えなければいけないわけでね。

当時は、この手の小難しい本を読んだり、トリュフォーや日本で言えば大島渚の『青春残酷物語』や『日本春歌考』などの映画を観ては、仲間と喫茶店でああだこうだと、語り合っていました。