地震・原発・災害 週刊現代
「糸魚川大火災」いったい誰がどう補償するのか
被害総額は少なく見積もっても30億円!
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火元に賠償請求できるのか

この失火責任法は、出火元になった人間に重大な過失があったと認められない場合は、賠償の責任が免責されると定めている。つまり、隣家などに燃え移った火事による損害に対して出火元は一切賠償をしなくても良いということになるのだ。

では、今回のA氏の「鍋の空焚き」は重大な過失(重過失)に当たるのか。

「過去に、てんぷらを揚げようとして鍋にサラダ油を入れて火にかけたまま炊事場を離れてしまい失火させたという事例があり、重過失に認定されています。

今回は、失火に対して、より注意義務が要求されるであろう飲食店経営者の起こした火災であるため、責任を問える可能性もある。

しかし、鍋を火にかけて放置したことで起きた火災が全件重過失になっているというわけではなく、あくまでケースバイケース。

しかも、重過失認定されたからといって、あれだけの規模の損害のすべてを、中華料理店の経営者ひとりに賠償できるはずがない。事実上、中華料理店側から損害賠償を受けることは極めて難しい」(前出・加藤氏)

つまり、火災保険に入っていないと、A氏に責任を求めることもできず『泣き寝入り』になってしまう可能性が高いのだ。

 

今回の火災を、家と財産を失った住民たちの悲劇とばかりに片付けるわけにはいかない。行政が負担する瓦礫の撤去費用や支援金の財源は我々の支払った税金だ。

多くの人々に経済的な負担を負わせる原因を作った当のA氏は当初、つきあいのある周囲の家数軒にひっそりと謝罪に訪れたと言うが、パタリと姿を消し、その後の行方はようとして知れない。A氏は、いまどこで、何をしているのか。

同市内に住むA氏の実姉はこう語る。

「弟がやったことを、とにかく本当に申し訳なく思っています。出火の原因は空焚きといわれていますが、それは少し違って。実はあの日、弟は仕込みでラーメンの具材を作るためシナチクを茹でていたんです。いつもは弟の奥さんの仕事なんですが、あの日は奥さんの体調が悪く、弟が代わりにやっていた。

その作業の途中で、奥さんの様子を見るためにいったん店を離れたのですが、その時にうっかりしたのか、火を消すのを忘れてしまった。今は家族一同、途方に暮れています」

たった一度の「うっかり」が、人々から奪ったものはあまりにも大きい。

「週刊現代」2016年1月28日号より