地震・原発・災害 週刊現代
「糸魚川大火災」いったい誰がどう補償するのか
被害総額は少なく見積もっても30億円!
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当座に必要となるお金や仮住まいは、こうした支援によってなんとか補えるかもしれない。

だが、一息ついたのもつかの間、住民たちが元の生活を取り戻すうえでの最大の負担である、家の再建資金の工面という問題が立ちふさがる。

住居新築のための費用について、国は低利子での貸し付けや取得時の税金の減免などの制度は用意しているものの、返済不要で給付してくれる制度はない。主な建て替え資金としては、火災保険会社から支払われる保険金を用いることになる。

だが、火災保険の補償内容は、保険契約の時期や内容によって大きく異なってくる。

保険契約に詳しいファイナンシャルプランナーの清水香氏が言う。

「火災保険には、建物自体を対象にするものと、建物の中の家財を対象としたものの2つがあります。家を購入した時に、その両方に加入している人もいるでしょう。家財にはテレビなどの電化製品、棚やテーブル、ベッドなどの家具が含まれます。生活に必要ならば、歯ブラシ一本までお金が出ます」

家が全焼し家財を丸ごと失えば、生活は想像以上の困難に陥る。寝る布団もなければ、暖房器具もない。衣類は下着から何まですべて新しくそろえなければならず、季節ごとの出費はバカにならない。とはいえ、きちんと火災保険に入ってさえいれば、そうした生活に必要なお金は補償されるというわけだ。

ただし、火災の前に家にあったすべてのものが火災保険によって補償されるわけではない。

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タンス預金は補償されない

「まず、ぜいたく品は別枠の保険になります。保険会社によって異なるので一概には言えませんが、30万円以上の宝石や腕時計などの装飾品、書画、骨董品などの美術品は事前の申請がなければ対象にならず、しかも点数に制限がある場合が多い。

それと、一般家庭に一番関係あるのは自動車でしょう。仮に家が全焼し、車庫に置いておいた車が燃えたとしても、火災保険の補償の対象には含まれません。別途、車両保険に入っていないと補償は受けられないのです」(前出・清水氏)

さらに、今回燃えた地域は高齢者が多く、「銀行に足を伸ばすのがおっくうでタンス預金をしているひとがいっぱいいた」(前出・80代男性)というが、

「現金や有価証券、印紙切手などは金額にかかわらず、一切補償の対象にはなりません」(前出・清水氏)

一度燃えてしまった財産を取り戻すことは、もうできないのだ。

 

また、建物そのものへの保険も、契約内容によって受け取れる金額が大きく変わってくる。

「現在の火災保険は、最初の契約時に『失った建物を現時点で新築するにはいくらかかるか』をもとに契約する事になっています。これなら、仮に全焼したのが30年前に新築した建物であっても、同規模の新しい建物を建てるのに必要な金額を満額支払ってもらえる。

ところが、昔の火災保険は現在とは違い、『時価』をもとに支払うという契約が主流でした。この場合、時間が経つとともに、支払われる金額が低くなってしまう。

今回、火災にあった地域は、木造の古い家が大半だったということなので、もし火災保険も古い条件のものなら、十分な金額が支払われない可能性があります」(前出・清水氏)

今回全焼と判定された家は120棟。このうち火災保険に加入していて、1月5日時点で火災保険の受け取りが決まっているのは67棟。保険会社が支払う合計額は約12億円にのぼる。

「大きな災害時に備え、保険会社がさらに別の保険会社の保険に加入しリスクを分散する『再保険』と呼ばれる仕組みもありますが、通常の火災保険について契約しているケースはあまり聞かない。

今回のような想定外の大規模火災でも、基本的には各保険会社がそのまま引き受けることになる。今回の支払い額が経営に与える影響は少なくないはずです」(大手損害保険会社幹部)

では、住民にとって最悪の事態、すなわち火災保険に加入していなかった場合はどうなってしまうのか。

国も保険会社も頼れないとすれば、出火原因を作ったA氏に損害賠償を求める他にない。

だが、日本ではこの責任を問うことを難しくする事情がある。

東京永田町法律事務所の加藤寛久弁護士が言う。

「日本には失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)というものがあります。これは、燃えやすい木造の住宅が密集していた明治時代にできた法律。

木造が多いと、火災時に大きな被害が生じることから、ちょっとした過失によって火事が起きてしまった場合に、出火元となった人間に莫大な賠償責任を負わせるのは酷ではないかという考えで生まれた法律といわれています」