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地震・原発・災害 週刊現代

「糸魚川大火災」いったい誰がどう補償するのか

被害総額は少なく見積もっても30億円!

燃えた家は144軒
被害総額30億円以上
4万平方メートルが焼け野原

炎が町をまるごと焼き尽くす映像は、衝撃的だった。死者が出なかったのが救いだが、家を失った住人たちには次なる困難が待ち受ける。家の、そして生活の再建のためのカネを、どうするかだ。

中華料理店主は「消えた」

「年明けから瓦礫の処理が始まりましたが、こないだまで自分の家だったものが処分されていくのを見るのは、すごくつらい。先代がコレクションしていた書画や置物はすべて燃えてしまったんですが、保険会社からはこれは家財補償の対象にはならないと言われました。

人生の大半を過ごしてきた家はおろか、今まで生きてきた証である思い出の写真や先祖代々の記録も、全部燃えてしまった。失ったものが多すぎて、何と言っていいか……」

こう語り、がっくりと肩を落とすのは、新潟県糸魚川市で昨年末に発生した大火災で家が全焼した80代の男性だ。

昨年12月22日に同市大町にある老舗の中華料理店から発生した火は、強い南風に乗り、周囲に軒を連ねる木造の家から家へと瞬く間に燃え広がった。約30時間にわたって燃え続け、最終的に約4万平方メートル、延べ144軒の家屋を燃やし尽くした。

中華料理店のA店主が鍋を空焚きしたまま外出したことが出火原因とされている。

この店の常連で、自身の家も全焼したという60代男性が言う。

「あそこはAの両親の代からやっている市内有数の老舗でね。Aは愛想が悪くて、ふだんは近所付き合いもほとんどない。昔馴染みの懐かしい味だから通い続ける人も多かったけど、Aが店主になってから厨房の中は乱雑にものが散らかっていて、衛生状態も悪かった」

消火後、姿をくらましたままのA氏に対しては、別の60代女性も怒りを露にする。

「12月の末に、駅前の建物で市が主催する住民説明会があったんです。すべてを失い、先行きの分からない不安のなかで、みんなが怒りに震えていた。ところが、A氏は姿すら見せず、『Aを呼んで土下座させろ』と怒号が飛びましたが、市職員は『気持ちはわかりますが、本人がそういう精神状態にありませんので……』というばかり」

積雪時でも通りを行き来できるよう庇をアーケード状にせり出させた「雁木造り」の家や商店が軒を連ね、観光名所として親しまれた町の一帯がすべて焼け野原になり、黒く焼け焦げた残骸だけが積み重なっている。

新潟県内で最古の蔵元である加賀の井酒造の酒蔵や、約200年の歴史を誇る老舗割烹・鶴来家、北大路魯山人など著名人に愛された平安堂旅館など、歴史的な建造物も跡形もなく燃え尽きた。

こうした文化的価値も加味すると、今回の火災の被害総額は「少なく見積もっても30億円はくだらない」(建築業界関係者)という。

 

支援金は400万円出る

気が遠くなるほどの被害だが、家が燃えてしまった住民たちは、なによりも先に、当座の生活を立て直さなければならない。そのために、行政がサポートする法律がある。

内閣府の防災担当者が言う。

「そもそも、中華料理店の失火が原因ということで、天災ではなく、人災。通常であれば、当事者間で解決される事案です。

しかし、今回の火災は吹き荒れる強風によって瞬く間に燃え広がったため、自然災害(風害)と認定されたことで、被災者支援のための法律である『被災者生活再建支援法』と『災害救助法』が適用されています。

また、現在進んでいる瓦礫の処理についても、住民の実質負担をゼロにする方針が示されています」

この「被災者生活再建支援法」により、全焼になった家の住民については一軒につき、国から300万円、新潟県から100万円の合計400万円の支援金が支給される見込みだ。

さらに、「災害救助法」により、瓦礫の処理と、家の再建が進むまでのあいだ、住民には仮住まいが用意される。

「世帯人数が3名以下であれば、共益費、管理費込みで上限6万円、4名以上の世帯の場合は7万円を限度に、民間の賃貸物件を行政が借りあげ、今回の被災者に提供します。希望された場合は、公営住宅への入居も可能です」(新潟県災害対策本部の担当者)

契約期間は最長で2年間。住民たちはこの間に家の再建をすることになる。消火後の行政の対応が迅速だったこともあり、現時点ですでに多くの住民が仮住まいでの生活をスタートしている。