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青学・原監督夫妻が実践する「子供の力を引き出す魔法」

ビジネスパーソン必読です!

なぜ青学だけが強いのか。その裏には、12年間支え合い、喧嘩もした夫婦の物語があった。

強さの秘密は「寮生活」にあった

圧倒的な強さで箱根駅伝を三連覇した青山学院大学。その2日後、トレーニングを終えた学生たちは町田寮で夕食をとっていた。

その傍らには監督の原晋(49歳)と、妻で寮母の美穂さんがいる。二人は寮に住み、学生と寝食を共にしているのだ。青学の強さは「規則正しい寮生活にある」と原は言う。

「朝食と夕食は寮生全員でとる。『疲れているから今日は朝ごはんを抜く』では健全な身体は作られません。それに全員が顔を合わせることでチームに一体感が生まれる。私も寮を不在にしていない限り、立ち会っています」

美穂さんも口を揃える。

「食事の様子から学生の体調の変化に気がつきます。いつもうるさい子が静かになっていたり、ごはんを2杯食べている子がおかわりをしなかったり……。気になったことは監督に報告しています」

「チームの母」だけに見えているもの

12年前、原夫妻は原が監督兼寮長、美穂さんが寮母として青学にやってきた。それまで原は中国電力の営業マンで、美穂さんは専業主婦だった。美穂さんは今では夫を「監督」と呼ぶ。

「監督の采配、育て方も上手いんでしょうけど、この寮に私たちが住んでいるのが、大学生にはマッチしているんじゃないかな。役割は監督が練習、私が生活を見ています。

寮則はそんなに多くないですが、夕食の配膳当番は1年生のルールの一つ。私にとっては選手の性格を把握するうえで大事な時間です。

選手同士の会話を聞いていると、仕切りたがり屋、いじられ役と個性もわかります。高校時代から寮生活をしていた子か、それとも親元から来た子かによって、接し方も変える。洗濯もしたことのない子は寮生活ってストレスが溜まると思いますよ。

体調を崩す子もいて、ケアの仕方も人によって違う。一人ひとりに、親や大切な人がいることを忘れず、いい所をちゃんと褒めて、何か言いたいときに聞いてあげる存在でいたい」

箱根駅伝で7区を走った田村和希(3年)は体調を崩しやすい選手の一人だ。田村が美穂さんの観察眼を語る。

 

「年末にも体調を崩し、自分と監督は大丈夫だと思って箱根を走ったところ脱水症状になってしまいました。出発前に奥さんから『まだゲッソリしている』と注意されていたし、奥さんは8区の下田(裕太)に『和希がダメだったらアンタがやんなきゃ』と言っていたようです」

美穂さんにとっては寮暮らしの弊害もある。もともと公私の区別がないうえ、チームが強くなり、雑務が増えた。

「炊事、寮の掃除、買い出し、来客への対応、監督が講演で寮を空ける時は、消灯時間の22時まで受付をして……。確定申告の時期になると監督が一年分(!)の領収書を出してくるからその処理もある。おかげで自分の部屋の掃除をする時間も後回し」

最近は息抜きのジムに通うことも叶わず、箱根駅伝直前には夫と、スタッフが頭を抱えるほどの大喧嘩をした。

「きっかけは些細なことばかりです。今日は休めると思っても何かが起きる。自分のペースで何もできないけど、まぁ世のお母さんってそんなもんなんだろうね」

そう笑う美穂さんは青学の屋台骨であり、エンジンだ。