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社会保障・雇用・労働

親の介護にいったいいくらかかるか、ご存知ですか?

保険だけでは到底カバーできない

正月に実家へ帰省して、親の介護が迫っていることを再認識した人も多いはずだ。年老いた親の介護は、誰もがいつかは直面する問題だが、準備しようにも情報が不足していて、何から始めてよいのか戸惑われる方も多いだろう。

中でも、介護に当たる家族がまず心配するのはおカネのことだ。

日本には介護保険制度があり、利用者は一定の自己負担額だけ払えば介護サービスを受けられる。しかしながら、家族が負担する出費は、この自己負担額にとどまらない。

介護家族のための入門書『親の介護をする前に読む本』の著者・東田勉氏は、「介護にまつわる出費は介護保険だけでは到底カバーできない」と警告する。では、いったいどれくらいの費用がかかるのだろうか?

介護にはいったいいくらかかるのか

現在、日本には、介護保険制度があり、介護を必要とする状態と認定された被保険者に介護サービスなどの給付が行われる。この制度を利用すれば、介護サービスにかかった費用の1割(一定以上所得者の場合は2割)を負担するだけでよい。

介護保険の1割負担は、満額使っても要支援がおよそ月5000円から1万円。要介護がおよそ月1万6000円から3万6000円の間。これを聞いて安いと思われるかもしれないが、年金生活者には大きな負担となる。

定年後の老夫婦の家計は、後述するように、健康であっても毎月6万円の不足額を抱えており、そこに介護保険の自己負担が加算されると、さらに生活が圧迫されることになる。

さらに、介護が始まると介護保険の自己負担額以外にさまざまな支出が相次ぐ。これがバカにならない金額なのだ。

 

拙著『親を介護する前に読む本』で取り上げた事例を見ていただこう。

ある高齢のご夫婦は、夫が特別養護老人ホーム(特養)に入所したところ、月12万円の新たな負担が発生した。夫は要介護5で、介護保険料は1割負担なので月の負担増は約3万6000円発生する。実は、これ以外に8万円以上もの自己負担が発生したのだ。

介護保険があるのに、なぜこんなことになってしまうのか。

実は、居住費、食費、雑費は介護保険の適用対象外で、全額自己負担なのだ。居住費と食費は、利用者が介護状態であろうとなかろうと発生する費用なので、公費の補助は受けられない。

確かに、賃貸物件に入居している独居老人が施設に入居した場合は、これまで払っていた家賃と食費が発生しなくなるので、介護保険料の自己負担額以外の出費は抑えられるだろう。

しかし、施設に入居するからといって、家財道具を整理して住まいを引き払う人は少ない。施設から退所を迫られた場合に戻る場所がないと路頭に迷うことになるから、当然のことだ。必然的に、多くの場合、家賃と施設の入居費の二重払いが発生する。

持ち家がある老夫婦のどちらかが施設などへ入所する場合も同様だ。家や家財道具は残された配偶者が管理することになり、二重生活になる。

この場合も、施設に入居する家族の居住費の出費増を余儀なくされる。夫婦2人から単身生活になれば食費は減るだろうか、半額というわけにはいかない。これに見舞いの際に発生する交通費、理美容代、レクリエーション費、差し入れの食費などの持ち出しが加わる。

そもそも高齢者世帯の家計はかなり厳しい。2014年の総務省の家計調査を紹介した新聞の記事によると、夫が65歳以上、妻が60歳以上の夫婦のみの定年後世帯の場合、月の平均支出は約27万円。一方、収入の平均は約21万円(大半は公的年金)なので、約6万円の赤字だ。不足分は貯蓄を取り崩すなどして補わなければならない(2015年4月26日読売新聞)。

ただでさえ6万円の赤字なのに、介護関連で10万円以上の負担が加われば、たちまち家計が立ち行かなくなるのは必須だ。

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