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白米を食べるとやせる!? バブル期に誕生した真逆ダイエットとは

ご飯はこうして「悪魔」になった【2】

3000億円規模の「糖質制限」市場

すでに2000億円から3000億円規模の市場に成長したといわれる糖質制限。コンビニで手軽に買い求められるだけでなく、外食店でも麺抜き、ご飯抜きが可能になるなど、その勢いはとどまるところがない。もはや糖質は、この食事法を厳格に実践する人々にとって、自らの健康を揺るがす「モンスター」と化したといえよう。

しかし遡ることいまから30余年前、1980年から21世紀を回るくらいの時期にかけ、糖質制限と正反対の食事法があったことを覚えている人はどのくらいいるだろう。

その食事法の名前は「鈴木式」。創始者は、鈴木その子氏である。

鈴木氏は、晩年に近くなると、その独特の風貌からメディアではキワモノ扱いされることが多かった。このため彼女の原点が在野の料理研究家であることを知る人は意外と少ないのだが、この鈴木その子氏こそ、医学と栄養学の見地および自身のレストランである「トキノ」での実践を元に、独自の食事法である「鈴木式」を作り上げた人物である。

氏が、その成果をもとに1980年に発刊した『やせたい人は食べなさい―減量常識を破る奇跡の鈴木式』[1]は、瞬く間にベストセラーとなり、その後ミリオンセラーを達成した。

私の手元にある本著は、発売から6年後の72刷版。表紙の袖には次の2つの体験談が紹介されている。

1週間でウエストが細く……
「食いしん坊で、たくさん食べるのに、なぜ太らないの?」
と、友人たちに羨ましがられる私ですが、本書を読んでその理由がわかりました。そこで、あらためて「鈴木式」を実行したら、身長164センチ、体重51キロの私が、わずか1週間で、体重が2キロ減り、ウエストが2センチ細くなりました。

6か月で20キロ減量成功
入社以来14、5年で体重が30キロも増え、99キロに肥満した私は、内臓のすべてを害して、最低6か月の入院加療を宣告された。肥満で死ぬとは信じられず、美食の楽しみをあきらめきれなかった。そんなとき鈴木先生を知り、指導を受けて、病気は治り、体重が6か月で20キロ減、ウエストも30センチ細くなった。

当時一世を風靡した鈴木式。いったいどのような食事法なのだろう?

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やせたいのならご飯を食べろ

鈴木式で特筆すべきは白米の扱いである。糖質制限派が「悪魔」と称することすらある白米であるが[2]、鈴木式ではその白米を1日3回食べることが必須となる。

しかもその量はハンパではなく、女性であれば1食180〜240グラム、男性であれば300グラムが推奨される。これは、糖質制限派の中でも緩やかな論を展開する医師の山田悟氏が勧める1回の白米量70グラムを優に超える量だ[3]。

これだけでもすでに驚きであるが、鈴木式はそれだけにとどまらない。やせ気味の人には饅頭やアメのような脂質が低く、糖度の高い食べ物をおやつと夜食として食べることが勧められるのだ。糖質制限ブームの最中にあっては、自らデブと病気を招いているといわれても仕方のない食事法である1

いったいこの食事法の背景にはどんな理論があるのだろう。糖質制限と対照的な部分に着目しつつ、そのエッセンスをいくつかとりあげてみたい2

1「生野菜を食べすぎるな」、「水分の摂り過ぎを控えよ」というように、ダイエットにいそしむ人が嬉々としてとりいれそうな手法も鈴木式は次々と否定する。
2鈴木式の紹介に関しては、初作の『やせたい人は食べなさい―減量常識を破る奇跡の鈴木式』とその続編である『新・やせたい人は食べなさい:奇跡の鈴木式・スーパーダイエット』を参考にした。