最低の“ポンコツ”を寄せ集めたアメリカ軍は、なぜ世界最強なのか?
島地勝彦×伊藤祐靖【第3回】

撮影:立木義浩

第2回【あの父が一瞬だけ見せた「親心」

シマジ 自衛隊には何人もわたしの熱狂的なファンがいますけど、みんな凛としていて立派です。なかなかいい話だと思ったのは、福島の郡山に住んでいる陸上自衛隊のわたしのファンから聞いた体験談です。

3.11の後、海岸を歩いていて、足下がなぜか柔らかく感じたので掘ってみると、いたいけな少女の遺体が出てきた。彼はすぐに、なけなしの水筒の水で少女の顔についた泥を洗い流して遺体安置所まで運んだそうです。すべての遺体は津波の勢いで裸らしいですね。

伊勢丹サロン・ド・シマジの常連の航空自衛隊員もインテリでよく本を読んでいますし、顔も引き締まっていて男らしく、礼儀作法も知っているとわたしは思っているんですが、伊藤さんの本を読むといまの自衛隊は軟弱だというようなことを書いてありました。

やっぱり伊藤さんのような超一流からみると、いまの自衛隊は2流と映るんですか?

伊藤 いえいえ。2流といっているわけではありません。

シマジ 実戦では役にたたないということですか?

伊藤 いえいえ、そうともいいません。情熱はみんな持っています。これは、どこの国にもいえることで、平時の軍隊の永遠のテーマかもしれませんけど、本当に必要なものを追い求める姿勢が、間違った方向に行きがちだと思うんです。

シマジ 問題はこの70年近く一度も実戦を経験していない、ということにあるんでしょうか。

伊藤 ただ、実戦がいいのかというと、これもなかなか難しい問題でして……。実戦を何度も経験している人がいうことが正しいかというと、その経験からしかものを考えなければ間違ってしまう可能性もある。実戦を経験していなくても、その人がいうことが全て間違っているかというと、そんなこともない。大切なのは、どれくらい真剣に考えて、未来を予測しているか、だと思うんです。

たとえば宇宙飛行士というのは、まだ宇宙へ行ったことはなくても、宇宙に行ったらどうなるかということを全身全霊で考えて、予測しています。宇宙に何度も行っている人のほうが、もしかすると真剣味が足りないかもしれない。

ですから、どれくらい真剣に考えていているか、がいちばん大事なことです。命がかかっていようが、なにがかかっていようが、真剣になるのは簡単じゃない。いろいろな状況を想定して、そのなかに自分をどっぷりと漬け込むというのは、誰にとっても非常に難しいことです。ですから実戦経験の有無だけでどうにかなるというものではないと思います。

シマジ アメリカの海兵隊は、一人ひとりは大した戦術は持っていないけど集団になると強い、とも書いてありましたね。なるほど、と思いました。

伊藤 わたしだけではなく、誰からみても、彼らは単体だとビックリするくらいダメなやつらですよ。

シマジ へ~、あの海兵隊がですか。

伊藤 あの海兵隊がいちばんそうなんです。シマジさんもお会いになったらわかると思いますが、いままでみたこともないようなやつらですよ。

アメリカ軍だけでなく、残念ながら日本でもその傾向はあるんですが、ああいう組織に入ってくるのは、ほとんどが、その国の最低のやつらです。身体能力はない、頭は悪い、根性もない、すぐ泣く、痛がり、すぐお腹がすく、そういうパターンが多いというのは、残念ながらありますね。

各国とも似たり寄ったりですが、なかでも“米兵”は大したことない。だけど、“米軍”となると話は別で、やっぱり世界最強だと思います。そんな彼らを、集団としてシステマテックに動かせるところが素晴らしいんです。

シマジ それはつまり、上に立つ指導者が優れているということですか?

伊藤 そう思います。そういうシステムを作り上げる能力に長けています。軍隊だけでなくアメリカの会社組織、政治、国の仕組みにしても、システムがよく出来ているとわたしは思います。移民国家として誕生して、たかだか230年しか経っていないのに、世界の中でこれだけの地位にいるというのは、ガラクタを集めてきて、それなりの力を発揮するシステム作りが上手いんだと確信しています。

それに比べると、非常に残念なのが日本です。日本人は個々の能力は信じられないくらい高いんですが、その個体の能力をシステマテックに動かすのが決定的に下手なんです。国民性とか日本人の性質というのもあるんでしょうが、すぐにひがんだり、出る杭は打たれるような環境になってしまうんですね。