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キリスト教 近現代史
ほぼ暴徒!? 1950年代前半のクリスマスの無秩序っぷりがヤバイ
「なんでもあり」の祝祭空間

本来、日本人とはまったく縁もゆかりもないクリスマス。それがいつのまにかわが国では「恋人たちの夜」となった。いったいなぜ?

クリスマスと日本人の不思議な関係を解き明かす好評連載、戦後編(前回はこちらhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/50720 第1回はこちらhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/47056)。

敗戦後の占領が終わる頃、クリスマスの夜の繁華街では「なんでもあり」の無秩序な祝祭空間が生まれていた。

救急車がひっきりなしに出動

1951年が占領下での最後のクリスマス、1952年には独立、主権国家として復活した最初のクリスマスとなる。

占領下の1951年のクリスマス。

1951年12月25日(火)「騒乱の一夜は明けて」

「オールナイトと称する歓楽の一夜は明けた。(…)銀座、新橋付近の流しタクシーの流れはついに朝まで絶えず、銀座四丁目のゴーストップは「危険だから」というので午前三時まで赤青の信号が明滅する始末(…)新橋、有楽町などは終電までラッシュ続きで全部の窓口を開いてキップを売りさばいた」

「クリスマス・イヴに国電が終電を繰下げ運転をすると勘違いしたものが多く、各駅ともこの問合わせが殺到して大いに悩まされた。新橋では七、八十名、有楽町は五十名、新宿では三、四十名が終電に乗りおくれて駅前の屋台に〝収容〟されたが、有楽町駅では銀座口改札前で四、五十人の徹夜組もあった」

「一方、駅員は五色の紙クズやヘドなどのとんだプレゼントに悩まされ、二十五日の午前中は、その大掃除でつぶされた」

独立した1952年のクリスマス。

1952年12月25日(木)「二十四日夜、クリスマス・イヴの東京の盛り場は、大変な人出。こども連れやアベックなどは、歓楽極まった千鳥足のクリスマス族のウズにまき混まれて、身動きもできぬ有様だった。(…)ケガ人や交通事故が続出して、救急車はひっきりなしに出動、中には酔った勢いで火災報知器のいたずら者もあって、消防車が繰り出す騒ぎも数回」

「〝クリスマス・イヴという名の大さわぎ〟の一夜があけた東京銀座の二十五日朝、ホール、キャバレーの中ははき出したようなビールビンや紙クズ、仮面など、掃除婦たちの〝聖しこの夜〟の後始末がひと騒ぎ。だれも見ていないところで、イス、テーブルをやたらにデン、デンとけ倒しているボーイさんにはおそらく〝苦しこの夜〟だったのだろう」

両年ともに明け方のホールの写真が掲載されていて、まさに祝祭のあったあとらしい風景が写っている。アプレゲール、という言葉がつい浮かんでくるシーンである。

警察はやさしかった

1953年は、反動からか少し沈静化している。 

「金づまりを反映してか同夜はクリスマス酔客の引揚げが早く、九時ころから十二時ごろまでに大半が帰り、山手線の終電が五、六分おくれた程度で、例年のように駅頭での夜明し組は少なかったという」(1953年12月25日(金))

 

1954年はなぜか、銀座新宿の狂乱レポートがない。騒いでないわけがないとおもうが、載っていない。

1955年はまた大騒ぎぶりが記事になっている。

「昨夜のクリスマス・イブは都内盛り場に〝キリスト狂徒〟の波がくり出し、例年のようにオール・ナイトのランチキ騒ぎをくり返した」

「イブは酔っ払いによって110番と火災報知器のイタズラが終夜続発し、ひどいのは「人殺しだ」との知らせもあり、警官隊がかけつけると、酔いつぶれた男がカネを払わないために、女給群にフクロだたきにあい、救いを求める電話だった」

「夜十時をすぎれば、そろそろエタイの知れない紙の帽子をかぶった酔っ払い連が、諸々方々でカンシャク玉をぶっ放すやら、取っ組み合いのケンカを始めるやらで、軒並みにネオン輝く並木通りは、まるで気狂い部落」

「盛り場ではあっちこっちでケンカをしたり、ガラスを破ったりしたのが続出したが、この夜の警官は「まあまあ、キリストさまに免じて…」と逮捕したものはほとんどなく、もっぱらなだめ役に回った格好だった」(1955年12月25日(日))

警官がやさしい。大宅壮一のコメントが載っている。

「イブ騒ぎをこう見る・大宅壮一氏:世界中どこへいってもこんなバカな騒ぎはみられない。結局これはみんながいつも何か享楽のハケ口をみつけており、クリスマスがその絶好のきっかけになるということなのだろう(…)とにかくこういうランチキ騒ぎは健全な国家の姿ではない」

警視庁防犯部長のコメントもある。

「日本が貧乏国になって、まだ賠償もかかえているというのに、警視庁が終夜営業を許可するのはランチキ騒ぎをあおることになると批判があり、その点は同感である。

ただ、身分不相応なランチキ騒ぎをするかしないかは、個人の人格と良心の問題で、これに警察が手を出して統制するというのは危険な考えだと思う。

(…)業者の〝商業クリスマス〟を助けるわけではないが、サラリーマンにボーナスがあるように、業者にとってカセギ時だから、オール・ナイト許可の措置があってもよいのではないかという、思いやりも当局の一部にはある」

あくまで警察はやさしい。