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野球 週刊現代
清宮幸太郎はプロで通用するのか? 進化を続ける超高校級スラッガー
今秋ドラフト最大の目玉

一昨年の夏、甲子園で放った2発のホームランはいまも目に焼き付いている。高校3年生として迎える今秋のドラフト。「プロで活躍する力はない」と言う評論家もいるが、はたしてどうなのか。

明らかに変わった

'16年も暮れようとする12月25日のクリスマス。千葉県鴨川市内の野球場では、寒空のもと、早稲田実業高校野球部の紅白戦が行われていた。

主力組の3番を打つ清宮幸太郎(17歳)は、184㎝の一際大きな身体を揺らしながら、ゆっくりと左バッターボックスへ。落ち着いた背中から漂う威圧感は、周囲のチームメイトとは明らかに質が違う。

特徴的なオープンスタンスで構えると、引いたバットをぐるぐると回してタイミングをとる。重量感がありながら、ゆったりとして力みは感じられない。

初球、真ん中に入ったストレートをコンパクトに振り抜く。打った瞬間ヒットになるとわかる鋭い打球は、センターの正面に落ちた――。

この日は久々の実戦形式の練習にもかかわらず、清宮は3打数2安打。第1打席こそ飛んだところが悪くセンターライナーに倒れたものの、打球の速さは目を見張るものがあった。そして、いずれの打席も、打球を引っ張りがちな清宮らしからぬ、綺麗なセンター返し。

清宮が出塁すれば、後の4番を打つ1年生の大砲・野村大樹も必ず出塁する。理想的な攻撃パターンが完成されていた。

長年清宮の様子を見ているアトランタ・ブレーブスの日本担当スカウト・大屋博行氏が言う。

「ここ最近の清宮君は、明らかに変わりました。チームバッティングができるようになった。以前はランナーがいても早いカウントからバットを振って凡退するケースが見られるなど、才能があるぶん、率直に言って『自分本位』な部分があったのは事実。

それがいまは、つなぐバッティングを心がけている。追い込まれてからのストライクぎりぎりのボールにも、なんとかくらいついてバットを当てようとする粘りが出てきた」

「チームを勝利に導くためのバッティング」とは何か。昨年の夏、主将に就任した清宮に自覚を促すきっかけになったのが、10月はじめから開催された秋季都大会だった。

この大会、早実は順当に勝ち上がり、決勝では西東京最大のライバル、日大三高を破って、見事、来春の選抜甲子園への出場を確実にした。

だが、勢いづくチームを尻目に、大会中の清宮は不振を極めた。

準々決勝の関東一高戦は執拗な内角攻めに苦しみ、早実に入学して以降の公式戦では初めてとなるノーヒットに終わる。

そして、決勝の日大三高戦では、相手のエース左腕の、外角へのキレのあるスライダーに手も足も出ず、5打席連続の三振に倒れるという「屈辱」を味わった。

 

落合に匹敵する柔らかさ

「清宮のバッティングは、どっしりしたフォームで身体を軸に非常に速いスピードでバットが円を描く。その円の中のボールを捉えるのは抜群に上手い。

逆に言うと、フォームが崩れてしまうのを嫌うので、左ピッチャーのスライダーのように円の外に逃げていくボールの対応には苦しんでいる。レベルの高いピッチャーと当たる機会が増えたからこそ見えてきた課題です」(前出・大屋氏)

この試合の後、清宮は取材陣にこう語った。

「こういう時は打てないので、気にしたり、落ち込むことはないです。それより、僕が三振した後に野村が打ってくれて、やっぱりこいつは男だなと思いました」

人一倍負けん気が強く「たとえ打てなくても『向こうが上』とか『実力で負けた』という言い方は絶対にしない性格」(早実関係者)だけに、後輩の活躍を讃え、自身の不調には平静を装っていた。

だが、順風満帆の野球人生で初めてと言ってもいい「スランプ」に、言葉にできないほどの悔しさを清宮が感じていたのは想像に難くない。

同時に、自分が不振のときでも主将としてチームの勝利に貢献するにはどうしたらいいのかを、清宮はこの時から強く意識するようになった。