経済・財政 裏社会
潜入、張り込み、愛人調査…秘密組織「マルサ」の実態を徹底解明!
段ボール箱の10億円を発見するまで

国税局査察部、通称「マルサ」。潜入調査、張り込み、尾行、強制調査……。税の公平を守るために脱税を許すまいと、日々奮闘している。だが、この組織の実態は、われわれの眼には実に見えづらい。彼らの行動は、あくまで極秘裏に行われるからだ。

そんな「秘密組織」の内幕を明かしたのが、『国税局査察部24時』だ。著者の上田二郎氏は、合計17年間にわたって内偵調査部門で勤務した、正真正銘の「マルサ」だ。「ここまで書いていいのか」と関係者が驚いた一冊。上田氏が、実際の強制調査の瞬間を明かす――。

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きっかけはカードキー

実施総括 「社長さん……このカードキーは、どこの鍵ですか?」
ターゲット(社長)「はて、なんでしたかね? 長いこと使ってないので、記憶にありません」
実施総括 「どうやら貸金庫の鍵のようですが、本当に覚えていませんか?」
ターゲット「貸金庫は使っていません」
実施総括 「そうですか……話してもらえないようですね。ならば、こちらで探します」

東京都内のとある会社を、マルサの男たち(註:ここでは実施班。マルサの男は、ターゲットを尾行・張り込みをする内偵班と、実際に強制調査を行う実施班に分かれる)が強制調査したところ、貸金庫の鍵らしき一枚のカードキーが見つかった。カード裏面には規約と電話番号が書いてあるが、一見して何の鍵なのかわからない。

現場責任者の実施総括がいくら問いただしても、社長は絶対に口を割らない。

実施総括 「みんな、聞いてくれ。どこかに契約書があるはずだ。徹底した捜索で見つけてくれ。既に差し押さえた書類の中にあるかもしれないから、もう一度見直すように!」
 
調査現場に実施総括の声が響き渡る。配置された査察官全員が、書類をひっくり返して再点検に入った。

現場にある書類は必ず一読し、脱税の証拠がないかを見極めてから差し押さえるのだが、この会社には膨大な書類があって、全部を丹念になど見ていられない。

一度のガサ(強制調査)で300箱(A4フラットファイルが30冊入る程度の大きさ)もの書類を差し押さえることさえある。

実施査察官「総括。レンタル倉庫の契約書が見つかりました。場所は博多です」
実施総括 「よし! 間違いない。契約書とカードキーに書かれた番号が一致している。社長さん。何の鍵か分かりましたよ……もう一度聞きますが、倉庫には何が入っているのですか?」
ターゲット「…………」
 
ターゲットが言いたくなければ、令状を取って博多の倉庫を開けるだけだ。彼の会社の計上した架空外注費が博多の銀行で出金されていたため、内偵段階から必ずその近辺に、脱税で得た果実(タマリと呼ぶ)の隠し場所があると読んでいた。

 

重要物証が入っている可能性がある場所は、その日のうちに確認しなければ内容物を疎開されてしまう(別の場所に持っていかれてしまう)。倉庫は警備員が常駐するため24時間使用可能だが、契約者がカードキーを持参して暗証番号を入力しない限り、絶対に開錠しない規約になっていた。

上田は福岡地裁で追加令状を取る役目を任され、調査前日から博多に入り、当日は福岡国税局で本部室(強制調査の指令室)からの指示を待っていた。

中田統括「案の定、博多でタマリが見つかったようだ。すぐに福岡地裁へ行って令状を取ってくれ。日没まで4時間しかないから急げ!」
上田  「了解しました」

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