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トヨタがカルロス・ゴーンに学ぶべき「対トランプ交渉術」
まずは花を持たせることも必要だ

トランプvsトヨタ

「グアナファト新工場(メキシコ)によって、米国内での自動車生産台数と雇用が減ることはない。(トヨタは米国内に)219億ドルを超える直接投資、10カ所の製造工場、1500のディーラー、そして13万6000の雇用を抱えており、消費者と自動車産業に最大の利益をもたらすために、トランプ新政権と協力していくことを楽しみにしている」――。

この声明をトヨタの米法人(Toyota Motor Sales, USA)が出したのは、米東部時間の先週水曜日(1月5日)のことだ。

トランプ次期米大統領が常とう手段のツイッター攻撃で、建設予定地を間違えながらも、トヨタのメキシコ新工場建設は「あり得ない」(No way)ことで、「米国に工場を作るか、さもなければ高い関税を支払え!」と恫喝したため、トヨタ米法人が真っ向から反論したのである。

同じようにトランプ氏に批判された米空調メーカーの「キャリア」や、米自動車2位のフォード・モーターは、あっさり白旗を掲げ、メキシコ工場の建設を撤回したのと比べても、対照的な対応と言えるだろう。

トランプ氏は大統領選挙期間中から人種的な偏見を隠さず、乱暴な保護主義論を振りかざしてきた。それだけに、日本では政府高官が相次いでトヨタに肩入れする発言をした。読者の中にも、「さすが、世界一のトヨタだ」と溜飲を下げた人が多いのではないだろうか。

しかし、就任まで2週間を切り、政治的なパフォーマンスの演出に躍起の新大統領に対して、この時期に、あえて正論を吐くことのリスクは決して小さくない。果たして、トヨタにそれだけの覚悟があったのだろうか。

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これがトランプのスタイル

なぜ、トヨタはトランプ新大統領の標的にされたのか。

メディアの間では、NHKがインターネットで解説したように、「背景には、アメリカの国益を最優先に掲げる『アメリカ第一主義』がある」といった見方が一般的だ。

実際、トランプ氏は選挙期間中から一貫して保護主義の観点に立ち、北米自由貿易協定(NAFTA)が「アメリカから雇用を奪っている」と見直しを主張。その一方で、アメリカ企業が国外に移転した工場から輸入する製品に35%の関税をかけると警告してきた。

 

NHKは、豊田章男・トヨタ自動車社長が5日に東京で、メキシコ新工場建設計画を見直す予定がないと述べたことが引き金になって、これまでゼネラルモーターズ(GM)やフォードに向いていたトランプ氏の攻撃がトヨタに向かったと示唆している。

この騒動で、東京株式市場では6日、トヨタが前日比1.7%安の6930円と2日続落を記録したほか、日産自動車が2.2%安、マツダも3.2%安と自動車株が全面安の流れに傾いた。

株式市場全体も、6日の日経平均株価は66円36銭安と5日の下げ(73円47銭安)と合わせて、大発会としては記録的な上げを記録した4日の上昇分(479円79銭高)の3分の1を失い、保護主義大統領の危うさ(トランプ・リスク)を改めて痛感させる展開になった。