規制緩和・政策 経済・財政
朝日新聞のあまりに稚拙な「経済成長否定論」を一刀両断してみせよう
経済面でも、この国をミスリードするか
髙橋 洋一 プロフィール

「成長率批判」はあまりに身勝手

マスコミでよくある意見は、成長戦略こそがその解決策というものだ。そして、安倍政権では成長戦略ができていないのでダメだ、という批判にもってくる。

この論法は一部当たっているが、多くは的外れだ。

そもそも成長戦略は、長期的には成長率を高めるだろうが、短期的な効果はまずない。成長戦略の効果が出るのは早くても数年先であり、短期的な効果はない。

しかも、成長戦略で当てるということは、成長産業を探すことであり、それは至難の業である。筆者は、しばしは成長戦略を当てることは、千に三つほどの確率で、下手な矢でも1000本打てば、数年後に3本も当たれば御の字であるといっている。

短期的な手法は、アベノミクスの第一の矢の金融政策と第二の矢である財政政策によるしかない。

この意味で、アベノミクスが金融政策、財政政策、成長戦略という3本の矢を用意したのは、短期的・中長期的には正しいのだが、マスコミはその関係をきちんと理解できないために、処方箋の説明はかなりデタラメになっているのだ。

その理由は、マクロ経済学への無理解にある。そもそも、オークンの法則はマクロ経済学の基本原理であるが、こうしたことを理解せずに、アベノミクスを語りたがるのはマスコミの悪いところだ。

せっかくであるから、この際オークンの法則を題材として、失業を可能な限り減少させるような経済政策を考えてみたい。

オークンの法則の背後には、マクロ経済の基本概念として総供給と総需要の差であるGDPギャップがあり、景気の良し悪しはGDPギャップではかることができて、成長できずにGDPギャップが大きくなると、失業が増えることがわかる。

ここまで来ると、次に述べるように、金融緩和と財政出動はともにGDPギャップを縮めることもわかる。

財政出動は公的部門の有効需要を直接創出するのでわかりやすい。一方、金融緩和については、実質金利の低下、為替安などで民間部門の有効需要短期的に、長期的には効果累積額でみると大きく作用する。

財政政策は直接有効需要を作るので、短期的な効果は大きい。一方、財政政策が財政事情などで継続的にできない中、金融政策は継続的に実施しやすいので、金融政策は長期的に効果が出やすいともいえる。

 

こうして、短期的な効果は財政出動の方が強いが、中長期的には金融緩和も効果が出る。となると、金融緩和のほうが失業率低下の累積効果が大きくなる。

こうしたマクロ経済学の基本的な理解があれば、財政出動とともに、金融緩和も失業を減らすということがわかるはずだ。そして、累積効果が大きくなる金融緩和の場合、インフレ目標は緩和しすぎないための歯止めだ。これは欧米先進国の常識でもある。

また、最近の失業率の低下は、金融政策の効果ではなく、生産年齢人口の低下のためであるという議論もあるが、これは、人口減少だからデフレになると同じくらい、間違った考え方である。それは、生産年齢人口が増えていた以前のときのほうが失業率が低かったことからもすぐわかる。

こうした誤解は、マクロ経済学の理解ができていないばかりか、統計データのリテラシーに欠けていることの問題でもある。