〔撮影〕大河内禎
ライフ

ダラダラ大勢の人と「つながる」意味って本当にある?

ドミニック・ローホー流「断る技術」

ものをたくさん持っていると、ものに自分が縛られることになって疲れてしまう。

「人も、ものと同じです。"たくさん"は必要ありません」

世界中にファンを持つ、フランス人著述家で人気ミニマリストのドミニック・ローホーさんは、そう語った。

「煩わしい義理だけの付き合いを『断る』。エネルギーが奪われるだけの友達からの誘いを『断る』。『NO』を言えるおとなこそ、自由で魅力的なんです」

NOの価値、ひとりで立つことの意味は、どこにあるのだろう。ドミニックさんが暮らす京都で、「ひとりで過ごすのに最高」と教えてくれたお気に入りの場所を歩きながら、ゆっくりとインタビューが始まった。(取材・文/白江亜古、撮影/大河内禎)

振りまわされてはいけません

おとなになれば、どうでもいいお喋りに何時間も付き合うのはやめにしましょう。若いときと違って、私たちには時間も体力も限られているのですから。

人からの誘いを断って、時間、エネルギー、お金……とにかく「自分」を大切にすることを考えなければ。

贅沢とは、着飾って女友達と高級レストランへ行くことではありません。

本当の意味の贅沢とは、急がずゆっくり時間を過ごすこと。時間や行動の無駄遣いをしないこと。品質(日用品はもちろん、付き合う人との価値観なども)に妥協しないこと。ストレスを感じたり、疲れてしまう行為や付き合いを、はっきり断れる"自由" を持っていることです。

 

「NO」は自分を守る魔法の言葉

結局、NOが言えないのは弱い人なのです。自分に弱くて、人にも弱い。

「これは私はしない」と自分自身にNOが出せれば、「今度の食事会には行きません」と他者にもNOを言うことができます。

NOは強さ、なんです。YESと同じように、NOと普通に言えるようになれば、自信がつくから精神もパワフルになる。

「NO」は自分を守る魔法の言葉。

NOが言える強さを持てば、本当に必要な"ここ一番" のとき、誰かに自分のエネルギーや時間をたっぷりあげることもできます。

孤独の時間が必要なワケ

私はひとりが好きです。散歩も旅行もひとりでする。孤独を味わいたいとき、寺へ行くのはおすすめです。

京都の紫野大徳寺にある瑞峯院(ずいほういん)の、素晴らしい枯山水と対峙してみてください。小石で表した荒波の中に、立っている石と寝ている石があり、これは安定とバランスを表しています。非常にためになる教えです。

たとえば友人と会うなどして、外から入ってくる刺激や楽しみは一瞬の喜びにはなりますが、心に安定をもたらしてくれるものではありません。私たちに大事なのは、安定した揺るぎのない"自分"という土台を持つこと。そこがエネルギーの源となる。

安定を得るためには周囲に振りまわされず、ひとりで過ごし、考える時間が必須です。私の大好きな瑞峯院だけでなく、教会やホテルのバーなど、エネルギーを満たしてくれる静かな場所は、あなたの身近にもあるはずです。

孤独を味わうレッスン

孤独をエンジョイできないと、何かのクラブに入ったり、女子会をしたり、"みんな"と一緒に過ごすことになる。それが本当に楽しいのか、自分のためになっているのか考えてみてください。

孤独を味わうためにはレッスンが必要です。たとえば、知らない人に話しかけてみる。これは孤独だからこそ、できること。私はよくそれをします。

ある日は昔ながらの佇まいを保ち、すっきりと片づいた京都の履物屋さんに立ち寄り、80代の女主人と話しました。「すごくきれいにされていますね」の一言から、ほどよい距離感のある会話を楽しめる。「この先に昔、梶井基次郎の『檸檬』のモデルになった果物屋さんがありましてね」なんていう情報をもらえたりする。

"みんな"と一緒では持ち得ない、自由で満ち足りた時間です。