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世界経済 アメリカ

最後の資本主義〜知れば知るほど背筋が寒くなる「アメリカの現実」

曲がり角に立つ世界を読み解く

資本主義の終焉

イギリスのEU離脱、アメリカ大統領選でのトランプ氏の勝利、韓国大統領のスキャンダルに伴う大規模デモと辞任・弾劾問題、イタリアの国民投票での事実上の首相不信任など、反グローバリズムやアンチエリート主義で読み解けるような、既存政治への不満や反発が噴出している今の世界情勢は、決して対岸の火事ではないはずだ。

アメリカや欧州のような移民・難民問題こそ起きていない日本だが、ワーキング・プアに象徴される経済格差を報じるニュースは頻繁に耳にする。

いずれはアメリカのような極端な二極分化に陥るのではないかと心配になるが、今のアメリカでは実際にどのようなことが起こっているのか、何が問題の本質的な原因なのかを、近代資本主義の拠り所である「自由市場」のメカニズムを明らかにすることで解明しているのが『最後の資本主義』である。

複雑な要素が絡み合う経済問題について書かれる本の多くは、どうしても難解になりがちだ。しかし、本書のわかりやすさ、明瞭さ、そして、読み物としての面白さは群を抜いている。

アメリカではロビー活動で政治が大きく左右されることを異国に暮らす私たちも(とりあえずの範囲で)知っているが、本書で示されているアメリカの現状を知れば知るほど、背筋が寒くなる。大企業やウォール街の富裕層が、いかに巧妙に、自らに都合のいいように自由市場のルールを作り変えてきたか。

これでは一度底辺層に押しやられた人々は、どうあがいても這い上がることができそうにない。このまま中間層の消滅に向かえば、結局は市場における購買力が低下し、現在の資本主義経済が立ち行かなくなるという著者の警告には説得力がある。

 

暗澹たる未来が待ち受けているようにしか思えないまま読み進めた本書だが、終盤において、現状を変える拮抗力が出現することへの期待と具体的な提案がなされていて、困難の先の希望を垣間見ることができた。

リスクに怯える日本人

戦後70年以上にわたって、常にアメリカを追いかけて来たような日本だが、今のわが国を覆っている閉塞感が、単にアメリカに追随していることから来ている現象なのかどうか、一度立ち止まって考えておく必要があるだろう。その手助けになるのが『リスクに背を向ける日本人』だ。

本書は、日本とアメリカ、それぞれの国の著名な社会学者の共著であるが、二日間にわたって行われた対談がベースになっている点がユニークだ。

本書で扱っている問題は多岐にわたり、しかも、かなり突っ込んだ議論が展開されているのだが、対談形式でまとめられているため、私たちのような一般読者にも取っ付きやすく、読みやすいものになっている。

全部で9つの章が設けられている本書は、今の日本の若者に見られる「リスク回避傾向」は、若者だけではなく日本社会全体を特徴づけているものだということがテーマとなっている。

社会的なリスクが大きいと一般的には思われているアメリカ社会よりも、日本社会のほうが実はリスクが大きい(セカンドチャンス、サードチャンスが用意されていない)ために、日本人はリスク回避傾向が強い、という本書の指摘には、なるほど、と深くうなずける。

そんな二人の対談を純粋に楽しんでいるうちに、今の日本が直面している問題と、その原因が見えてくる一冊である。