国際・外交
「親露反中」を外交の基本路線に定めた、トランプ次期政権の頼もしさ
激動の国際情勢、その「序章」の読み方

日本にはプラスの展開だ

2017年が始まった。新年早々、飛び込んできたのはトルコの銃乱射テロ事件、それに北朝鮮の最高指導者、金正恩が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射準備は「最終段階にある」と述べたニュースだ。世界の激動は一段と加速している。

昨年末からの主な国際ニュースをおさらいしておこう。まず米国は12月29日、ロシアの外交官35人を追放した。「ロシアがサイバー攻撃で米大統領選に介入した」という理由だった。

米国によれば「ロシアの諜報機関が民主党のシステムに侵入し、告発サイトに情報を流出させた」という。オバマ政権は事実関係について相当、自信をもっているのだろう。米国内のロシア所有施設にロシア関係者が立ち入ることも禁止した。

これに対して、ロシアのプーチン大統領は米外交官の追放など報復措置を控えている。報復しなければ事実を認めたも同然になりかねないが、それでも自制したのはオバマ政権がまもなく終わり、トランプ次期政権との関係を重視したからに違いない。

一方で、トランプ氏は次期国務長官に親ロ派といわれるエクソンモービルのレックス・ティラーソン会長兼最高経営責任者(CEO)を指名した。ティラーソン氏はロシアの国営石油会社と合弁事業を展開し、ロシアから友好勲章を授与されている。

この人事をみても、トランプ次期政権がロシアとの関係を修復したい意図がうかがえる。トランプ氏はロシアの対応について直ちにツイッターで「素晴らしい判断。常々、プーチン氏はとても賢明と思っていた」と賞賛した。

これでトランプ、プーチンの両氏が米ロ関係の改善に意欲を持っていることがはっきりした。外交官追放劇がかえって相思相愛の証明になった形だ。最後までロシアと噛み合わなかったオバマ政権の皮肉な置き土産である。

逆に、中国とは緊張が高まっている。

中国は1月2日、南シナ海に空母、遼寧を派遣し戦闘機や艦載ヘリの発着艦訓練を実施した。遼寧は昨年末、日米首脳会談のタイミングに合わせて沖縄と宮古島の間を通過し、その後、南シナ海に入っていた。

中国とすれば、もちろん「南シナ海はオレの海だ」という世界、とりわけ米国に対する示威行為である。トランプ氏がどう反応したかといえば、金正恩のICBM「最終段階」発言にひっかけて「中国は北朝鮮について米国を助けようとしない。上等だ」と皮肉っている。

 

一方、トランプ氏は通商代表部(USTR)代表に元次席代表のロバート・ライトハイザー氏、新設する国家通商会議のトップにはカリフォルニア大学教授のピーター・ナバロ氏を起用した。2人ともばりばりの対中強硬派として知られている。

一連の発言と人事をみれば、トランプ次期政権が中国に対して強腰で臨むのは間違いない。一言で言えば「親ロシア・反中国」がトランプ次期政権の基本路線になる。日本から見れば、こうした姿勢はもちろん日本にプラスである。

日本にとっては中国こそが一番の脅威であり、だからこそロシアとは敵対できない。同盟国である米国が同じポジションに立つのであれば、戦略的にこれほど心強いことはない。米国が逆の立場だったら、いかに複雑なゲームになるかを想像すれば自明だろう。

具体的に言えば、北方領土が日本に返還されたとして、ロシアと敵対する米国が「島に米軍基地を置く」と言い出すと分かっていれば、ロシアは反発する。当然、交渉はうまくいかない。実際の交渉でも、この問題にロシアが神経を尖らせている。

次に韓国だ。韓国政府は反日市民団体が釜山の日本総領事館前に設置した新たな慰安婦像を事実上、容認する姿勢を示している。地元の自治体はいったん撤去したが、その後、市民団体の猛抗議を受けて方針転換したのを政府が追随した形である。

朴槿恵政権は弾劾をめぐる最高裁の判断待ちで、もはや政権として機能していない。こんな政府の態度では、慰安婦問題をめぐる一昨年末の日韓合意は風前の灯どころか破棄されたも同然だ。こうなった以上、日本とすれば無責任な韓国を突き放す以外にない。

世界をあきれさせているのは、日本ではなく韓国である。日本はこれからずっと「ちゃんと国家間の約束は守ってね」と韓国に言い続ければいいだけだ。

トルコの銃乱射テロ事件では、過激派組織のイスラム国が犯行声明を出した。トルコでは7月、エルドアン大統領が首都を離れている間に軍の一部がクーデターを起こしたが、失敗に終わっている。その後、大統領は強権を発動して反政権勢力を粛清した。

トルコは欧州の東南、中東の西、ロシアの南西に位置し、もともと地政学的に重要な位置を占めている。どの勢力から見ても、トルコを奪えば一挙に地域に対する支配力を強められるのだ。そんな理由から東西冷戦発祥の地でもある。

だからこそ、テロリストたちもトルコを狙う。クーデター失敗後も国内は安定していない。テロとの戦いはことしも続く。

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