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驚異のゲノム編集技術「クリスパー」特許は誰の手に?
特許裁判の判決が間近に迫る

私たち人類を含む、あらゆる動植物のDNAを自在に改変するゲノム編集「クリスパー(CRISPR Cas9)」。この驚異的な技術の基本特許は一体、誰の手に渡るのか――その大勢が今年前半には判明する見通しだ。

クリスパーは今後、「医療」「製薬」「農業」「バイオ」など、人類の存亡に関わる重要業界に空前の産業革命をもたらすことが確実視されているため、その基本特許の行方を業界関係者は固唾を飲んで見守っている。

ゲノム編集とは何か?

ゲノム編集とは、(人間の場合)約2万個あるとされる遺伝子を含む「ゲノム(DNA上に記された全遺伝情報)」を狙った箇所で切断(破壊)したり、改変することができる技術だ。従来の「遺伝子操作(遺伝子組み換え)」技術とゲノム編集とでは、以下のような重要な違いがある。

従来の遺伝子組み換えは「(科学者がDNA上の狙った遺伝子を改変できるまでに)1万~100万回に一度の成功率」といった「低精度の技術」であったのに対して、(現在3種類あるゲノム編集技術の中でも最新モデルの)「クリスパー」は(まだ百発百中にまでは達しないものの)狙った箇所をほぼピンポイントで改変できる「高精度の技術」である。

つまり、これによって、運や偶然に頼っていた「神頼みの技術」から「科学者が主体的にDNAを改変できる技術」へと、遺伝子操作が決定的な転換を遂げたのだ。

この違いは大きい。まず遺伝子組み換えに要する期間やコストが桁違いに圧縮される。従来の「運や偶然に頼った技術」では、たとえばバイオ企業がトウモロコシや菜種など「GMO(遺伝子組み換え作物)」を開発する際に、最短でも数年の期間とそれに伴う巨額の開発費用を必要とした。

一方、クリスパーの場合、DNAの組み換え作業自体は1日もあれば終わってしまう。当然、開発費用もそれに伴って劇的に圧縮される。

が、それ以上に大きな違いは、私たち人間にも適用できるということだ。

 

そもそも従来の遺伝子組み換えでは、たとえば「ノックアウト・マウス(各種実験用の遺伝子組み換えネズミ)」用に開発された組み換え技術は、あくまでもマウスにしか使えないという、極めて汎用性に乏しい技術であった。

また、組み換え精度が(前述の通り)極端に低いため、仮に、この技術が人間(たとえば何らかの遺伝性疾患の患者)に適用できたとしても、とてもではないが危なくて使えたものではなかった。なぜならDNA上の狙った箇所とは違う場所にある遺伝子を誤って改変してしまえば、病気を治すどころか悪化させてしまう恐れがあるからだ。

これに対しゲノム編集「クリスパー」は、前述の「マウス」、あるいは「トウモロコシ」や「菜種」など特定の動植物に限定されるのではなく、「あらゆる動植物」に適用される汎用的な技術である上、(前述の通り)その組み換え精度が飛躍的に向上。つまりDNA上の狙った箇所を百発百中で改変する超高精度の技術へと進化することが、ほぼ射程圏内に入ってきている。

このため生命科学者や医学者らは、言わば「安心して」この技術を人間に適用することが可能になったのだ(ただし、いわゆる「デザイナー・ベビー」など倫理的な問題から、ゲノム編集をヒト受精卵に適用することには、科学者らによる自主規制がかけられている)。

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