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アメリカ
トランプと共和党の微妙な距離感〜「暫定的支持」継続のカギは?
主流派からにじみ出るホンネ

「トランプ旋風」始動の地にて

まもなくトランプ大統領の就任で、共和党は、大統領府と連邦上下両院の双方を手に入れる。「オバマ政治」をすべてひっくり返す「共和党の時代」だと鼻息は荒い。

選挙後、筆者はトランプ現象発祥の地の1つ中西部アイオワ州に再び入った。

同地は2015年からのトランプ旋風の定点観測の拠点だ。2015年1月の地元紙の世論調査でトランプは共和党内支持率1%で事実上の圏外だった。それだけに同州トランプ支持者は「1%から大統領」まで自分たちが背中を押したと自負している。

その一方で、農業州アイオワはTPPで恩恵を受ける州でもある。この州の共和党知事テリー・ブランスタッドは次期駐中国大使に決まったが、穏健派の自由貿易主義者だ(筆者は2011年以降、何回か同知事の面会機会を得ているが、素顔の知事は「親中派」というよりビジネス重視派である。州の農産品売り込みに熱心で、姉妹関係にある山梨県との経済交流にも力を入れていた)。

また、アイオワは強固なキリスト教福音派の地盤で、党員集会では宗教保守派が連戦してきた。財政保守のリバタリアン運動も活発だ。

地方に少ないネオコン派(ワシントン政策エリートやニューヨーク知識人)以外の共和党の主な3派すべてと初期のトランプ支持運動のコアなメンバーが割拠する。

共和党本流のホンネ

共和党本流系のトランプ次期大統領への微妙な距離感は変わっていなかった。

空港まで迎えにきてくれた旧知の郡委員長は、元クリスティ支持者でトランプ愛好者ではない。だが、地元の連邦下院議員候補が本選中に「反トランプ」に転向したさい、日和見主義と揶揄し、「何があっても自分の党の大統領候補(トランプ)を応援すべき」と論陣を張った「愛党者」だ。

その彼もトランプの票集めには骨が折れたと述懐する。夫人はモルモン教だが(夫妻で信仰は別)、党の「マシーン」の1つである地元教会の奥様方はトランプの女性観を問題視し、今でも強く軽蔑しているという。

 

各地の地方共和党は「ペンス」と「最高裁」の2つのキーワードをフル回転させたという。

共和党内の穏健派は「ヒラリーの4年を我慢」「棄権」の2択を迫られていた。ワシントンの外交専門家のようなヒラリーへの投票も論外ならば、トランプ支持の選択も無かった。夏の党大会でも、ブッシュ親子(直近の大統領)、ロムニーとマケイン(直近の大統領候補)、ケーシック(開催州の知事)が揃ってボイコットした。

その空気を「危機」と見たトランプ陣営は、マイク・ペンスを副大統領候補にもってきた。

副大統領に就任するマイク・ペンス(右)〔PHOTO〕gettyimages

ペンスはカトリックから福音派に転向し、キリスト教右派に絶大な支持を受けているが、党本流とのパイプもある。「正副両方の候補が、政治経験のないトランプみたいなアウトサイダーなら棄権する」と息巻いていた地方幹部も、下院議員と知事を経験している「ペンスが副大統領候補なら」と傾いた。

直前動員の決め台詞は「トランプが何か共和党や保守主義に従わない動きを示せば弾劾すればいい。そうすればペンス副大統領が繰り上がる。トランプへの1票は、ペンス政権への1票」だった。ブッシュ息子政権における「影の大統領」チェイニー副大統領を想像した有権者が多かったという。

ところで、出口調査ではトランプ票が学歴、所得などで広範囲にまたがっていたことが驚きを与えたが、共和党主流派もトランプに入れた以上、妥当な結果ではある。

出口調査では渋々ながらの1票でも、情熱的ファンの1票でも「投票」以上の支持の「情熱濃度」は示されない。「トランプ票」のすべてが「トランプ支持者」ではない。予備選から支持した人と分けて調査すれば、各項目の割合に一定の変化は生じるだろう。