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トランプ政権は中国を「為替操作国」に認定!? 中国リスクにご用心

不気味な人民元安の動き

いよいよ2016年も終わりを迎えようとしている。

1月の人民元ショックに始まり、1月末の日銀によるマイナス金利政策採用、6月の「Brexit(イギリスのEU離脱)」、そして、11月には米大統領選でのトランプ勝利、と予想外の出来事が頻発した一年だった。

その影響をうけて世界のマーケットは大きく変動した。

そして、2017年に入ると、1月20日の大統領就任式を経てトランプ新政権が発足する。この新政権の政策スタンスがまた世界のマーケットを揺さぶる展開となるだろう。

新政権の陣容も、徐々に明らかになってきている。中でも懸念されるのは、貿易・通商政策と安全保障・外交政策の組み合わせである。両者を担当する閣僚には対中強硬派が名を連ねそうな状況となっているため、トランプ政権の対中政策が今後のマーケットのリスク要因になる可能性がある。

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今年、人民元安が放置された理由

今年(2016年)1月の大混乱の後、マーケットは中国リスクを意識しなくなっている。だが、このところ、対ドルで見た場合の人民元安が進んでいる点には注意が必要ではないかと考える。

12月28日午前中時点で、人民元レートは1ドル=6.95元近辺で推移している。2015年12月時点の人民元レートは1ドル=約6.45元だったので、この1年でドルに対して8%近い下落を記録していることになる。

 

問題は、これが、中国政府が意図し、誘導したものではない可能性が高い点だ。最近の人民元レートの下落は、外貨準備高の減少を伴っている。中国の外貨準備高は11月時点で3兆520億ドルであるが、8月以降、加速度的に減少している(図表1)。

さらに気になるのが、外貨準備高以外の資金流出である。特に国際収支統計では、中国の当局が実態を把握していない「誤差脱漏」の赤字(つまり対外流出)が加速度的に増大している。2015年は過去最高の1880億ドルの使途不明の資本流出(誤差脱漏)を記録した中国だが、2016年は6月時点までだが、2015年を上回る額となっている。

このうち外貨準備高の減少は、主に中国当局の「人民元買いドル売り介入」によるものだと推測される。

このほか、人民元安を阻止する中国当局の行動といえば、資本流出を防止するために資本取引規制の厳格化がある。だが、資本流出には歯止めがかかっておらず、この結果、人民元にも下げどまりの兆候がみえない。

この資本流出は少なからず、中国全土の共産党高官らによる不正蓄財の海外逃避の可能性がある。

中国政府(習近平政権)にとっては、これに歯止めをかけないと、やがて社会不安が究極まで高まり、共産党一党独裁体制を維持できなくなるため、当局は資本流出阻止にやっきになっている側面がある。

だが、現実にはなかなか流出がとまらず、その結果として人民元安が進行しているのである。

一方で、人民元安の進行が、中国だけではなく、世界全体の景況観を反転させているのもまた事実である。中国のPMI(企業の景況観を表す指数)は、人民元安の進行とほぼ並行して改善している。

さらに、世界の主要31ヵ国ベースのPMIも、人民元安が本格化した6月以降、改善が始まり、人民元安が加速度的に進行した10、11月に大きく改善した。人民元安によって中国経済が改善し、それにともなって世界貿易も回復しつつある。ちなみに日本の輸出数量もこれにともなって増加に転じている。

そのため、これまで中国当局は、人民元安是正に本腰を入れてこなかったのもまた事実ではないかと思ったりもする。

 
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