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企業・経営 裏社会
朝鮮総連ビル報道を巡って、警視庁が月刊誌を名誉毀損捜査する理由
言論への圧力につながりやしないか?

なぜ警察が動くのか

警視庁が、2016年秋口から2つの会員制月刊誌への名誉毀損捜査を開始している。

『FACTA』(ファクタ出版)と『エルネオス』(エルネオス出版社)――質の高い的確な情報を、年間購読契約を結んだ企業幹部やマスコミ関係者、官僚や政界関係者に向けて発信している月刊誌で、事情通の間では広く知られている。

問題となったのは、いずれも朝鮮総連中央本部が入居する総連ビル(東京都千代田区)の売却に関する記事である。

「北朝鮮の事実上の大使館」である総連ビルは、競売にかけられて混乱の末、15年1月28日、山形県の倉庫業、グリーンフォーリスト(グ社)が44億円で買収し、総連のダミー会社的存在のグ社によって総連の継続使用が決まった。

これを受けて、両誌は15年3月号に掲載。いずれも顛末を過不足なく報じるもので、速報性に欠けるためか掲載は1ページに留まったものの、内容は「なぜグ社だったのか」を精緻に記している。 

 

だが、記事に名前を出されてハラを立てた告訴人(匿名にする理由は後述)が、15年8月、両誌を刑法第230条の名誉毀損罪で訴え、警視庁がこれを受理した。

民事での賠償責任や謝罪広告を伴う名誉毀損の訴えは、日常茶飯となっている。立証責任は報じたメディア側にあり、メディアは情報源を秘匿しなければならず、その分、裁判所は情報の精度を欠くと判断しがちで、法廷での争いはメディア側に厳しい。

数十万円だった賠償金額が、今は数百万円が当たり前となっており、名誉毀損訴訟は、賠償金を含む法廷費用とそれに要する労力を考えれば、出来るだけ避けたい。そのため報道関係者は、「訴訟リスク」を計算して報道に臨むほどになっている。

アメリカニズムの浸透で日本も訴訟社会化しており、安易な報道が訴訟につながるのは仕方がないが、「3年以下の懲役」を含む名誉毀損罪での刑事訴訟となると、それが度重なる捜査機関の事情聴取や、秘密情報の詰まったパソコン類、顧客、執筆者、取材協力者などの個人データの押収につながる家宅捜索を受ける危険性がある。

それだけに、メディアが刑事訴訟を恐れるのは当然だし、訴訟を起こす企業や個人は、それが報道の自由を侵害する恫喝訴訟にもなりかねないことを知るべきだし、受理して捜査する警察には、自由な言論を妨げることへの自覚が求められよう。

そうしたメディア総体への重大な警告を含む捜査であることを指摘したうえで、総連ビル問題を振り返ってみよう。

 
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