企業・経営

ネガティブ報道でも電通の株価が下がらないのはなぜか?

投資家はこんなところを見ている

株価は上場傾向

12月23日に行われた「ブラック企業大賞2016」には、大方の予想通り、広告代理店最大手の電通が選ばれた。

昨年(2015)、当時の新入社員が自殺したことが過労による労災と認められ、11月7日には労基法違反の疑いで、本社や支社で厚労省の強制捜査が行われるなどの話題が続いたことが、受賞の理由だろう。12月28日には代表取締役社長の石井直氏が引責辞任を表明した。

同社にとっては不名誉なことだろうが、過重労働を防ぐための「働き方改革」を推し進めるとアピールした以上、世間の厳しい目に晒されながら、「働きやすい会社」へと変わっていくよりほかないだろう。

一方これだけ話題になったにもかかわらず、株価の推移を見てみると、強制捜査があった日には下落したものの、すぐに反発し、ここ3ヵ月間でみると上昇傾向にある。

株式市場は、電通の不祥事は同社の企業価値に影響を及ぼす要因ではない、と判断しているようだ。長年の実績があるからこそ、ということは分かるのだが、投資家たちは、なにが同社の経営のカギを握るものだとみているのだろうか?

その要因を、改めて決算書の数字を追うことで明らかにしていきたい。

 

営業利益率が低い理由

昨年度期の売上高は国際会計基準で4.5兆円にも達し、国内二番手の博報堂にほぼ3倍の差をつけている電通だが、意外なことに営業利益率は全上場企業の平均とされる4~5%にも満たない、たったの2%ほどしかない。

「大手広告代理店はものすごく稼いでそう」というイメージとは裏腹に、売上原価が非常に高いため、利益が出しづらいのだ。原価のほとんどは、広告主側に支払う媒体費が占めている。

広告代理店は基本的に、広告を出したい企業(広告主)からお金をもらい、広告を掲載してくれるテレビや新聞・雑誌などの媒体にお金を払い、その差額(マージン)を受け取るというビジネスモデルだ。そのため売上は大きくなりやすいが、メディアへの支払いがある分、利益率は一定以下に抑えられてしまうというわけだ。

この構造から逃れる方法の1つは、自社でメディアを持つことだ。それは、今年「AbemaTV」への巨額投資で話題をさらったサイバーエージェントの数字を見ればわかりやすい。

サイバーエージェントは、売上高の5割・利益の3割をインターネット広告事業が占める、ネット広告代理店の最大手だ。その営業利益率は2015年度で12.8%であり、時価総額でほぼ等しいDeNAやmixi、コロプラなど他のITベンチャーには劣るが、電通や博報堂といった「広告代理店」の括りでは異例の高利益率となっている。

ネット広告でサイバーに次ぐオプトやセプテーニの営業利益率は5%程度であり、総合代理店三番手のADKも、営業利益率は2%ほどしかない。

サイバーエージェントが例外的に高利益率を誇る理由は、自社のメディアを育てているからだ。

インスタグラムに次いで日本で18番目に見られているWebサイトであり、月間で数億人が訪れるAmebaブログという強力なメディアを保有しているため、同メディア上に広告掲載を行っても、他社にお金を払う必要はない。ゆえに、広告業者自体が強いメディアを持ったり、強いメディアを持っている会社が広告業をメインとしているケースでは利益率が高くなる。

たとえばヤフージャパンの営業利益率は30%を超えている。スマホ向けメッセージングアプリ最大手のLINEも、世界で2.2億人が毎月使う自社の巨大メディア上で展開する広告事業が絶好調で、今年度の第3四半期までで140億円を稼ぎ、同社の売上の40%を支えている。AbemaTVも、サイバーにとって強力な自社メディアとなりうるからこそ、藤田晋社長は投資を惜しまないのである。