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国際・外交

リトル・トランプの跋扈、倒錯する世界…今年の国際情勢の読み方

3つのキーワードで読み解く

1月20日に第45代アメリカ大統領に就任する不動産王、ドナルド・トランプ氏。

蔡英文・台湾総統との電話会談後に「一つの中国」政策に縛られない姿勢をアピールしてみせた“ツイート外交”や、国務長官に石油メジャーの現職会長でロシアと太いパイプを持つレックス・ティラーソン氏を指名した政権人事などで、早くも国際社会を翻弄している。

就任前のその言動から、トランプ外交が世界にもたらすだろう新たな潮流を読み解いてみたい。キーワードは、「倒錯する世界」と「リトル・トランプの跋扈」、「仁義なきpivot(旋回)」の三つである。

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倒錯する世界

まず指摘したいのは、アメリカの大統領交代に伴い、世界の在り方がほぼ一夜にして倒錯しかねないことだ。それはある意味で、トランプ氏が「反エスタブリシュメント(支配層)」のうねりの中で唯一の超大国の最高指導者に選ばれたことの当然の帰結なのかもしれない。

命題の一つは、経済のグローバル化という大潮流が止まりそうもない中で、誰が自由貿易体制の舵取りを行うのかということだ。

トランプ氏は「アメリカ第一主義」を唱え、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱を宣言するなど保護主義の立場を鮮明にしている。これまで「開かれた経済」という経済秩序を世界に押しつけてきたアメリカが唐突に「いち抜けた」と言っているのも同然である。

国内農業保護などの観点からわずか数年前までTPPに強く抵抗してきた日本の安倍晋三首相が現在、アメリカのTPP離脱を思いとどまらせようと必死になっている姿には隔世の感を覚えざるを得ない。

それ以上に劇的な秩序の転換を予感させるのは、経済の地域統合を推進する中国の姿である。

国内経済の自由化は停滞しているようだが、アジアから中東、アフリカ、欧州をまたぐ経済圏の形成を目指す「一帯一路」構想や、東アジア地域包括経済連携(RCEP)構想の積極的な支援、それを支える投資を行うための「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の設立など、中国は国境を越えた経済圏の形成には積極的だ。

グローバル経済の最大の受益者である輸出大国・中国にとっては極めて合理的な政策なのだろう。

とは言っても、アメリカが保護主義へ向かい、社会主義市場経済を掲げる中国が経済統合の担い手となろうとしている姿は、これまでの世界の在り方を倒錯させるものではないだろうか。

 

アメリカの軍事力が「脅しの道具」と化す?

この文脈で筆者が気になるのは、世界最強を誇るアメリカの軍事力が持つ意味の変質である。

アメリカの軍事力は長らく、同国が戦後主導してきたリベラルな国際秩序を守るためだと説明されてきた。アメリカは、公海での「航行の自由」を守り、自由貿易体制を世界に拡大することこそが自らの国益だと信じてきたはずだ。いわゆる「パクス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」の世界である。

そしてこの点こそが、同盟国がアメリカと価値観、世界の在り方のビジョンを共有し、アメリカが盟主であることを支持してきた理由だった。

しかし、トランプ政権が保護主義に向かい、自由主義的秩序への関心を失うなら、「世界の警察官」を務めてきたアメリカの巨大な軍事力の存在意義はどうなるのか。

その答えを探す際に示唆的なのは、トランプ氏が12月2日に行った蔡・台湾総統との電話会談後のツイート発信である。