「働き方改革」を進める安倍政権は、厚生労働省が標準的なものとして示している「モデル就業規則」から副業・兼業禁止規定を外し、副業を原則容認する方向で検討している。そうした流れを先取りする形で、ロート製薬は一定の条件をクリアすれば社員の副業を認めることに決めた。

なぜ、いま、副業解禁が求められるのか。企業の人事施策などに詳しい法政大学大学院政策創造研究科の石山恒貴教授に聞いた。

石山恒貴氏
1988年、一橋大学卒業後、NECに入社して人事労務関係の仕事に従事する。その後、GEや米ヘルスケア企業に転職、一貫して人事労務関係を担当してきた。働きながら産業能率大学大学院経営情報学研究科修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了。博士(政策学)。主な著書に『パラレルキャリアを始めよう!』(ダイヤモンド社)、『組織内専門人材のキャリアと学習』(日本生産性本部生産性労働情報センター)

こんないいことがある

――いま政府が副業解禁を推し進める狙いは何か。

「1955年度の就業者に占める『雇用者比率』は44・1%だったのが、2010年度は87・3%になっており、雇用されることが当たり前になっています。

しかも日本の企業社会では同質な企業文化の中で限られた人々と社内で付き合う傾向が強いのではないでしょうか。こうした状況下では、一つの会社(組織)の価値観に自分の人生が縛られてしまう傾向に陥りがちです。

一方で人工知能の進化など科学技術の発展によって社会は大きく変化しています。激変の時代に一つの価値観に縛られることが、自分の人生にとってプラスとは言えません。むしろ社外で多様な経験を積む方が、個人にとっても会社にとってもプラスになる時代が来ています。

OECDも2003年、今後重要となるキー・コンピテンシーのひとつに、『異質な集団と関わっていく能力』を掲げています。事業環境の変化が激しくて、しかも複雑になっている時代は、個々人が異質な文化や価値観と接して学んでいかなければ、その変化についていけないでしょう」

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「さらに言えば、これまでの日本企業は、垂直統合によって閉鎖された自社内で独自の知識を蓄積させることで、イノベーションが成し遂げられると考えがちでしたが、技術の進化の激しい時代にそうした手法では対応できづらくなっています。

むしろ自社の知識を外に出すことで外部の知識と比較したり、時には融合させたりして新しい知識を生み出さなければなりません。

これをオープンイノベーションと呼びますが、そのオープンイノベーションを推進するためには、自社だけの視点で凝り固まった人材だけでは不可能ではないでしょうか。社外で多様な経験があり、多様な視点を持つ人材が求められています」