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エンタメ

『コンビニ人間』だけじゃない!2016年必読の日本小説ベスト12

年末年始に読んでおきたいオススメ本

今年もやってまいりました、年末ジャンボベスト「日本小説編」。このコーナーは字数制限(ほとんど)なしの太っ腹ベスト、冊数もとくに決められていません。それでは、今年はテーマ別でお勧め本を12冊ご紹介します!(番号は便宜上つけているもので、順位ではありません。書影、書名クリックでamazonに飛びます。)

同調と排除

のっけから重いテーマですが、日本の気鋭作家による以下3冊すべてに共通するのは、行き過ぎた同調と、異物、異質性の排除ということ。

今年は、グローバリズムの曲がり角というべきか、ボーダーレスで多様性重視の「グローバルごっこ」なんてやってられるか! というアングロサクソンの逆ギレで、イギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ大統領誕生と、英米の排外主義がいつになくはっきりと打ち出された衝撃の1年でした。

1 村田沙耶香『コンビニ人間』文藝春秋

今年、日本の出版界では、芥川賞を受賞した村田沙耶香が「クレイジーキャラ」で大人気に。村田さんの近年の小説に通底するのは、「ある特定の正義にのみ洗脳されるのは狂気」という主張です。

『コンビニ人間』のヒロインは大学時代からコンビニバイトで、就職経験なし(作者と同じ)、30代後半で彼氏歴なし、未婚。すると、世の中は「大学出たらふつう就職するでしょ!」「その年ならふつう婚活とかするよね?」と、「ふつう」「ふつう」を押しつけてきます。

この「ふつう教」に抵抗するため、ヒロインが信奉するのは、いわば「コンビニ教」です。

コンビニとは、服装から挨拶、あらゆる行動と言語がマニュアル化されており、統一規格以外のものは、「強制的に正常化され」「異物はすぐに排除される」場だと言います。

「私の身体の殆どが、このコンビニの食料でできている」と思うと安心するという、敬虔な「コンビニ教徒」であるヒロイン。ここには、村田沙耶香が一貫して書いてきた全体主義下での思考停止への批評があります。

2 羽田圭介『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』講談社

ある日、ゾンビが世界中に出現するという、社会風刺・文壇批評小説。デビュー10年でヒットのない作家「K」(羽田圭介のK?)、女性誌などへの露出で凌ぐ寡作の美人作家、バブル時代の栄華を引きずる編集者たち、福祉事務所のケースワーカー、ゾンビに噛まれる女子高生……さあ、本当にゾンビ化しているのは、だれでしょう?

前半は社会風刺色が強く、ゾンビへの対処法のお約束がわからない人々が真っ先にゾンビに噛まれてゾンビ化し、成敗される。あるいは、生活保護費受給者や申請者、ボケはじめた老人が社会のお荷物としてゾンビとみなされたりする。共同体の枠からはみ出したらアウトです。

ところが、後半は文壇批判がぐっと強くなり、むしろ周りの流れから必死でずれないようにしている人々がゾンビ化。ネットの「まとめサイト」を抜かりなく見てから意見を言うやつ、文学界の流行りの「文脈」に頼ってしか作品を書けないやつ。そのうち、ゾンビの分離隔離政策がとられ、日本はどこへ向かうのか…?

羽田圭介が体を張って日本の排他主義や同調圧力に立ち向かいます。

3 木村友祐『野良ビトたちの燃え上がる肖像』新潮社

2年後ぐらいの日本を舞台にしているのがわかるので、危機感がより生々しく感じられます。「世界スポーツ祭典」を控え、土地開発と美化を推進する東京。しかし近郊の河川敷には日々、ホームレスが増え続け、ある日近くの町に「野良ビトに缶を与えないでください」という看板が立つ。

そうした背景には、「大企業が儲かれば社会全体が潤うと宣伝して政府が推し進めた経済政策」の失敗があります。しかも、景気を口実にして政権批判ができないよう、「景気が悪いことを言うと罪になる『不景気扇動罪』」が立法化されようとしているのですから、恐ろしい。

河川敷では、人々と猫たちがそれぞれの特技を生かして暮らす一方、向こう岸には、アメリカ式「ゲーテッドタウン」の超高級タワーマンションが聳える。このタワマンが出来たころから、自分にとって不可解、不愉快、不都合なものは排除してよいという空気が流れだしたとか。じきに野良ビトたちの隔離移送計画が動きだす……。異常な格差を肌で感じさせる近未来小説です。

「コンビニ人間」「ゾンビ」「野良ビト」、こうして見ると、いまの日本を語るには、ただの人では間に合わないのでしょうか。