格闘技

輪島功一・世紀の必殺技「カエル跳びパンチ」はこうして生まれた

【最強さんいらっしゃい】第5回・後編

「そこで出てくるのが天下のカエル跳びだよ!」

最強とは何か、の答えを求めてさまよい歩くわれら「最強探偵団」に、輪島功一会長が秘話を明かす!前編はこちらから

視聴率40%男

輪島 「そこで出てくるのが天下のカエル跳びだよ!」

──出た、カエル跳び! 相手の目の前で突然しゃがんで、しゃがんだバネを利用して同時にパンチを打つ、日本ボクシング歴史に残る唯一無二の奇策!……そもそもなんですが、あのパンチはどういういきさつで生まれたものなんでしょうか?
輪島 練習のときから、屈伸運動とかうさぎ跳びをやりながら「この姿勢から、パンチを打てるんじゃねえかな」って思ってはいたんだ。ただ、「これを試合で出す勇気はあるかなあ」とも思っていた。でも俺のモットーは「練習は根性。試合は勇気」。な、ジムの壁にも貼ってるだろ。

 

──あ、本当ですね。座右の銘なんですね。
輪島 とすると、出せない勇気は駄目ってなるじゃない。それで意を決してやってみたんだ。そしたら「バコーン」って当たってさあ(笑)。予想以上に効果があった。「やったー」と思ったら、まあ、ボッシが怒った怒った(笑)。

──それは、そうでしょうね(笑)
輪島 誇り高き五輪メダリストのプライドを傷つけたんだからさあ、この野郎って感じでババ―っと来たんだ!「おーっし」って嬉しかったねえ。俺の思うつぼだよ。作戦通り!

──それ以外に「よそ見パンチ」が出たのもボッシ戦だったかと思うんですけど(笑)。
輪島 あれもうまくいったねえ(笑)。あれは偶然の産物だ。試合の何日か前に、タクシーに乗ってたんだ。運転手さんが口笛吹きながら運転するじゃない。で、赤信号で停まってパッと窓の外を見たんだ。後ろに座ってる俺もつられて窓を見た。…ところが何もないんだよ。で、信号が青になってまた走り出した。その瞬間「あ、これだ!」って(笑)。

──そこから作戦を思いつくのが凄いですね!
輪島 それをボッシの目の前でやったんだ。ぱっと客席の方を見たら、ボッシも……見たんだよねえ(笑)!

──ガハハハ!
輪島 そしたらこれも怒ってさあ。髪を振り乱して殴りかかってくるんだ。「カエル跳び」と「よそ見パンチ」、この二つが当たって、1ポイントの差で判定勝ちだもん。やった甲斐あったよ!

──入門から3年で世界王座奪取というのもスピード出世ですね。そこから3年間に渡って6度の王座防衛。3度目の防衛戦から、テレビ中継の視聴率が40%を割ったことがないとか、数々のレコードを打ち立てました。輪島時代の到来ですね。
輪島 次々と強い奴が来るでしょ。気が抜けないのは当たり前だけど、大変だと思ったことはまったくないね。デビューから世界奪取までが試練の3年間なら、6度の王座防衛は黄金の3年間っていっていいんじゃないかな。

──減量はなかなかきつかったんではないですか?
輪島 全然! 減量がきついんだったら、減量しなくていい階級で試合すればいいだけの話。俺がウェルターからJr.ミドルに上げたのは、それもひとつあったんだよ。体重落とさなくていいところでバリバリやればいいんだ。そもそも日本人は「きっとそうなんだろう」「多分そうだろう」っていう想像力だけは豊かなんだよ。でも実際は必ずしもそうじゃない。例えば、よく「試合1ヵ月前はセックスは禁止」とか言う馬鹿がいるんだけど(笑)。

──ああ、試合前の禁欲ですね。確かにそれは定説になっていますね。
輪島 あれは大ウソだよ。俺なんか、一度2ヵ月間「フリフリ」(※セックス)を我慢して試合に臨んだら、調子悪くて判定で負けたんだもん(笑)。

──やらないで負けたんですね(笑)!
輪島 だから駄目なのは、「フリフリ」そのものじゃなくて、それにばっかり夢中になって、ロードワークやらなかったり、練習さぼったりするのが駄目なんであって、行為そのものは駄目じゃないよ。全員やっといたほうがいいよ!(笑)

──やったほうがいいんですね(笑)
輪島 俺自身が今までの常識を覆してやってきた部分があったからさ、根拠のない定説は頭にくるんだよ。日本人の「道」という概念は素晴らしいものだと思うし、取り入れている面もあるよ。でも、それと盲信は別だよ。

──なるほど。「道」を極めた輪島会長ならではのお言葉ですね。そんな会長にとって世界王者というのは、どういう意味を持っていたんでしょうか?
輪島 それはただの結果だけど、嬉しいことがあってね。それは俺がチャンピオンになってから、25歳以上のボクシング希望者が急激に増えたこと。「15、6じゃないと駄目だ」なんて固定観念は崩れ去った。でも、反面苦い経験もしたよ。例えば4度目の防衛戦……。