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国際・外交 週刊現代 ロシア
「北方領土にカジノを」安倍首相はプーチン大統領にこう囁いた
仰天の日ロ会談舞台ウラ

まさに「同床異夢会談」だった。北方4島の元島民の往来や、共同経済活動でお茶を濁したものの、肝心の領土返還は「ゼロ回答」。そして水面下では、「北方領土カジノ計画」がひたひたと進行中―。

2時間40分の大遅刻の意味

「安倍晋三首相は、北方領土の共同経済活動という名のもとで、カジノ建設を狙っています。それをトップ同士で詰めることが、プーチン大統領をわざわざ故郷・山口まで招待した大きな目的の一つだったと思われます」

衝撃的な証言をするのは、日本のロシア分析の第一人者である中村逸郎・筑波大学教授だ。

'14年2月に安倍首相がソチ・オリンピックの開会式に出席した時に約束したプーチン大統領の訪日が、2年10ヵ月を経て、ついに実現した。

12月15日にプーチン大統領を迎え入れたのは、安倍首相のお膝元、山口県長門市にある天皇皇后も泊まった老舗温泉旅館「大谷山荘」だった。

当日は、日本中の目が、この山口県が誇る豪華温泉旅館に注がれた。特に、約7000人と言われる北方4島の元島民とその家族たちは、北方領土問題の前進に、期待を寄せたのだった。

だが、夜の大谷山荘での3時間に及ぶ首脳会談を終えた安倍首相は、これまで親しげに「ウラジミール」と呼んでいたのを「プーチン大統領」と改め、固い表情で記者団の前に現れた。

「二人だけで約95分会談を行いました。元島民の皆さんの故郷への自由訪問、そして4島における日ロ両国の特別なもとでの共同経済活動、そして平和条約の問題について率直かつ非常に突っ込んだ議論を行うことができた……」

つまりは、北方領土の主権の問題は、一歩も前進しなかったのだ。

 

随行したロシア人記者が語る。

「プーチン大統領にとってみれば、北方領土問題を話し合う15日の山口『温泉会談』は、いわば『前座』でした。だから平気で2時間40分も遅れて着いて、翌16日に東京で行う経済協力の調印という『本番』に備えたのです」

プーチン大統領一行の接待に当たった政府関係者も自虐的に振り返る。

「一行が来日する前から、これを『喰い逃げ外交』と言わずして何と言おうという感じでした。

ロシアは経済協力の要望リストだけ次々に積み上げてきて、一時は68項目にも膨れ上がった。そのくせ、『まずは信頼醸成だ』と強調して、肝心の北方領土の返還は、1956年の『日ソ共同宣言』に明記された『日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す』ということさえ認めなかったのです」

外務省は一貫して、北方4島の帰属(主権)が日本にあることをロシアが認めない限り、交渉には慎重であるべきだという意見を、安倍首相に上げてきたという。

「ところが、今年5月にソチで行われた13回目の安倍・プーチン会談の際、陪席した世耕弘成官房副長官(現経産相)が、『8項目の経済協力』をこれ見よがしに披露。プーチン大統領は大袈裟に拍手して、部下たちにも拍手させ、『セコウという名前は永遠にクレムリンに刻まれるだろう』と持ち上げたのです。

プーチン大統領としては、経済制裁を続けるG7(先進国グループ)にクサビを打ち込もうとしたわけですが、この発言に世耕副長官が舞い上がり、以後、安倍総理をリードして、ロシアにのめり込んで行ったのです」(同・政府関係者)

「領土問題は存在しない」

プーチン大統領は機先を制すように、訪日の1週間前の12月7日、読売新聞と日本テレビのインタビューを受け、きっぱりと答えている。

「ロシアには領土問題は全くないと思っている。ロシアとの間に領土問題があると考えているのは日本だ」

読売新聞(12月14日付)に出たインタビュー詳報によれば、プーチン大統領は、この発言に続いて、

「それについて我々には話し合う用意はある」

と、日本にフォローするかのように答えたことになっている。

だが、前出の政府関係者によれば、これは明らかに誤訳だという。

「ロシア側で発表されたインタビュー詳報を読むと、プーチン大統領は、『ピリガボール』(話し合う、交渉する)ではなくて、『ラズゴバーリバチ』という単語を使っています。これは、偶然街で出くわした知人同士が、ちょっと立ち話をするという意味です。

つまりプーチン大統領は、『立ち話くらいはしてやってもいいが、きちんと交渉する気はない』と言いたかったのです」