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朝日新聞が決して報じない「朝日新聞の長時間労働」問題

電通のこと、言えますか?

電通新入社員の過労自殺を大きく報じていたまさにその時、朝日新聞でも由々しき「労働問題」が発覚、社内で激論が起きていた。自分たちのことを棚に上げてばかりでは、読者もシラけてしまう。

朝日の社内は大騒動

〈厚生労働省はきのう、広告大手の電通に強制捜査に入った。違法な長時間労働がはびこっている疑いが強まったためだ〉〈ある調査では回答者の4人に1人が、自分が働く会社が「ブラック企業」にあたると思っているという。企業社会に失望ばかりが広がるなら、ひとも経済も伸びることはない〉

電通の新入社員・高橋まつりさん(享年24)の過労自殺事件を受け、11月8日の看板コラム「天声人語」にこう記してからおよそ1ヵ月後、今度は朝日新聞が労働基準監督署に注意された。「社員に違法な長時間労働をさせた」として、12月6日付で、労働基準法違反の是正勧告を受けたのだ。

ことの発端は、'16年10月にさかのぼる。ある社員が朝日労組に「所属長が私の出退勤時間記録を無断で書き換えている」と訴えたのである。労組が10月21日付で全社員に送付した、社外秘の組合報にはこうある。

〈(本件について)本部執行部は21日の中央経労協幹事会で、「WLB(ワーク・ライフ・バランス)の実現を図るとの制度の理念を踏みにじる、きわめて重大な問題だ」とする抗議および申入書を会社に渡しました。会社は書き換えについて「所属長が勤務記録を改ざんしていた事実が確認された」と、当該組合員に認めています〉

内部調査の結果、この社員の所属長は、社員の勤務時間データを、月に50時間以上少なくなるように書き換えていたことがわかったという。

朝日の中堅記者が言う。

「そもそも、うちで残業制度が適用される社員はごく一部。記者をはじめ、多くの社員が勤務時間も定まっていませんし、いつ働いたかは社内システム上での自己申告制です。そして、出退勤時刻は社員本人だけでなく上長も編集できる。

社用パソコンのログオン・ログオフ時刻も記録されているのですが、これは正式な出退勤時刻とはみなされない。つまり、実際には朝方まで働いていても、『0時まで働いた』というふうに勤務時間を短めに申告することや、あまりに長時間働いた場合は、上長が勤務時間を書き換えることが常態化しているんです」

 

この内部告発は、朝日新聞社内で大問題となった。少なからぬ社員が「ついに訴える奴が出たか」「自分にも心当たりがある」と感じたからだ。10月末からは、会社側と労組の直接対決が始まった。

〈組合側が電通事件を念頭に「これだけ社会的に関心を呼んでいる労働時間の問題に不正があった。今まで通り処分を公表しないという対応で済むのか。

勤務表の登録が安心してできない」と質問したのに対し、(会社側は)「一度(会社を)信用してもらえないか」「一度信じていただけないか」と繰り返し強調〉〈(改ざんを行った上長の)処分内容については「明らかにできない」と重ねて公表を拒否しました〉(11月14日付の組合報より)

こうした会社側の「ゼロ回答」に、社員の不満は爆発。最初に訴え出た社員も「勤務記録問題でお願い」と題した文書を公表し、改めて抗議を行った。その剣幕に折れるような形で、11月末には会社側は組合側に、改ざんを行った所属長の異動を視野に入れる旨を伝え、現在に至っている。

電通を叩いていた同時期に

労基署はこの騒ぎを見逃さなかった。前出の記者が続ける。

「11月初めには、ニュースサイトの『バズフィード』にいる元朝日新聞記者が、この勤務データ改ざんのネタを記事化しました。これで労基署に目をつけられた。電通の過労自殺の件がありましたから、(勧告は)一種の見せしめですよね」

『バズフィード』の報道によれば、労基署は朝日新聞側に、過去1年間の労働時間が特に長い5人の社員の勤務記録と、この改ざんを受けた社員の出退勤記録を提出するよう指示。

そのうち、財務部門に勤める20代男性社員の'16年3月の時間外労働時間が、法定の上限を4時間20分超える「違法な長時間労働」だったとして、今回の是正勧告を出したというわけだ。