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防衛・安全保障

自衛隊「オスプレイ導入」を中止できない、日本政府の呆れた事情

貧乏くじを引かされ続けていいのか?

首都圏にオスプレイがやってくる

沖縄の人々がおそれていた垂直離着陸輸送機「オスプレイ」の事故が遂に起きた。

「墜落」(米軍準機関紙『星条旗』)した機体は大破して沖縄県名護市の海岸に無残な姿をさらけ出した。集落付近の海岸からの距離はわずか80メートル。大惨事となる恐れもあった。

開発段階から墜落事故を繰り返し、性能が安定しないオスプレイ。沖縄県の米海兵隊普天間基地に24機配備されている。墜落したのはその中の1機だ。

2017年1月からは千葉県木更津市の整備施設で定期整備が始まり、沖縄からオスプレイがやってくる。

17年度には東京の米空軍横田基地に別の10機が配備され、18年度からは陸上自衛隊による導入が始まり、自衛隊機としてのオスプレイは当面17機となる。

墜落の恐怖にさらされるのは、もはや沖縄だけではない。近い将来、米軍機と自衛隊機合わせて51機もオスプレイが日本全土を飛び回るのだ。国民の安全・安心のためには、せめて自衛隊への配備は中止すべきではないのか。

 

そもそも自衛隊への配備は、異例の経過をたどった。

本来、自衛隊の武器類はユーザーの自衛隊が選定する。具体的には陸海空自衛隊を統合運用する制服組トップの防衛省統合幕僚監部が、20年先の安全保障環境を見通して策定する「統合長期防衛戦略」をたたき台に、陸海空の各幕僚監部が武力攻撃事態を想定して武器類の導入を要求し、予算化される。

陸上自衛隊幹部は「『統合長期防衛戦略』を受けて陸上幕僚監部がつくった『陸上自衛隊長期防衛戦略』に『オスプレイ』の名前はありませんでした。情報は入ってくるので検討対象になったはずだが、採用されなかった」と打ち明ける。

陸上自衛隊が導入を求めなかったのは、性能上の理由によるところが大きい。オスプレイは輸送機だ。陸上自衛隊はオスプレイの二倍以上の人員や物資を空輸できるCH47大型ヘリコプターを55機も保有している。速度、航続距離こそオスプレイが優れているが、狭い日本で活用するにはCH47で十分と判断した。

では、なぜ陸上自衛隊は導入することになったのか。

米軍が沖縄配備を進めた12年当時、沖縄から強い配備反対の声が上がった。これを見た民主党政権の玄葉光一郎外相は「安全性を訴えるため自衛隊も保有すべきだ」と提案、当時の森本敏防衛相が同調して13年度防衛費に調査費800万円を計上した。

「沖縄の民意」よりも「米軍の意向」を優先したい民主党政権と外務省、防衛省が共振したのである。

同年12月に衆院が解散され、選挙で勝利した自民党が政権に復帰すると、安倍晋三内閣は14年度予算に「オスプレイを陸上自衛隊に配備するための調査費1億円」を計上、さらに導入目標を15年度と公表した。

民主党政権で芽吹いたオスプレイ導入の兆しは、自民党政権で熟成され、異例の「政治主導による武器調達」が実現した。文民である政治家が「これで戦え」と軍事の専門家である制服組に武器を下げ渡したのである。

沖縄で墜落したオスプレイの同型機は、事故からわずか6日後に飛行再開した。

民進党の蓮舫代表は「事故原因や再発防止策の説明が先だ」と政府や米軍を批判するとともに「私は国民の感情というのはとても大切なものだと思う」と述べたが、自衛隊配備のいきさつを知るならば、米軍のオスプレイを批判しても「自衛隊への配備撤回」とは間違っても言えないだろう。

もとより日本政府が米軍の運用に注文をつけることはない。あまりにも早い飛行再開をみても「米軍の言いなり」であることがわかる。

さらに自衛隊への配備について、最大野党の民進党さえ撤回を求めにくい状況にあるとすれば、もはやわたしたちは51機のオスプレイが事故を起こさないよう祈るしかないのだろうか。