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不正・事件・犯罪 裏社会
「風俗界の帝王」の摘発を狙う神奈川県警の意地と思惑
カジノ建設が目前に迫るなかで…

「拉致監禁」に繁華街は騒然

横浜市の繁華街にある老舗蕎麦屋の前で、10月7日午後1時過ぎ、60代の馴染み客Xが、店の前に駐車していたワンボックスカーから降りてきた屈強な男たちに、無理やり連れ去られるという映画のワンシーンのような事件があった。

拉致監禁であるのは明白で、神奈川県警が出動。あたりは騒然とし、すぐに捜索は始まったのだが、Xは数時間後に“解放”された。警察が話を聞き、拉致監禁事件にしようとしたものの、のらりくらりと話をかわしてまともに答えない。
 
神奈川県警関係者が事情を説明する。

「我々は、誰がやって、その狙いが何かを、だいたい承知している。もちろん監禁された本人は、それ以上のことがわかっていて、口を開けばどうなるかも知っている。そこで、供述に期待することなく拉致事件を立件。その後で、原因となった『裏カジノ問題』を解明したい」

 

Xは、日本有数の風俗チェーンを持つ「風俗王」だが、裏の顔を持つ。それが「裏カジノの帝王」というものだ。

「風俗店だけでなく、そうした店が入居する社交ビルも、横浜、東京、札幌に持ち、相当な資産家です。そうしたビルには、裏カジノもあって、店の女の子たちが、馴染み客をアフターで連れてやってくる。表に決して名前を出していませんが、Xは横浜、東京、札幌で6店舗以上を開業しています」(前述の県警関係者)

飲食店も持っているから、グループの店で食わせ、キャバクラやクラブで飲ませ、裏カジノで遊ばせ、勝てば女の子をお持ち帰りする。Xは、「飲む、打つ、買う」を満足させる楽園を客に提供しているわけである。
 
ただ、いうまでもなくカジノは違法である。しかも、バクチは「博徒の世界」のシノギであり、暴力団は当然、みかじめ料を要求する。応じなければ、「シマ内」での開帳を認めない。裏カジノ業者にしても、「ケツ持ち」は、トラブル処理と債権回収のためにも必要不可欠で、Xも横浜の地元広域暴力団を使っていた。
 
暴力団にとって、Xは有力なダンナである。普段は丁寧に接し、立てるし、何かあれば若い衆が体を張って守る。ところが、Xには、時々、こうしたトラブルが起きる。
 
なぜか――。

「父親が戦後、横浜のナイトクラブで成功し、財を成した人で、苦労を知らずに育ったボンボンで、かつては『若』と呼ばれていました。国立大学を卒業、チャリティやボランティアに参加するなど社会性もある。ただ、人が良くて誰にでもいい顔をするから、奪い合いになる。同じ系列の暴力団3~4組織が、利権の取り合いをやっており、今回の拉致監禁も、その果てに起こった」(横浜の事情通)

伏線がある。事件の2日前、神奈川県警生活保安課と港北署は、賭博開帳図利の疑いで新横浜の裏カジノ「タイガー」を摘発、責任者と従業員の2人を逮捕した。県警の見立てでは、タイガーはXの店であるという。
 
店があるのは、新横浜駅に近い雑居ビルの7階。約130平方メートルの店内に、バカラテーブル6台が置かれ、関係者と客ら28名がいた。1日あたり30~40人の客が来店し、ひと月に約1億円を売り上げていたという。このカネは税務署に捕捉されることがない。単純に計算して6店舗で6億円のカネが裏カジノにもたらされるわけで、暴力団が放っておくわけがない。

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