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日本人が「働き方改革」に目覚めた一年〜「個」の犠牲から尊重へ

「出る杭」として人生を冒険せよ!

「個」の犠牲から尊重へ

今年も本当にさまざまなことがあった。テクノロジー関連では、囲碁で人工知能が人間のトッププロを破り、シンギュラリティが一気に身近になった。一方で、テスラモーターズのオートパイロット稼働時の死亡事故をきっかけに、自動運転の実用化と安全性を巡る議論も盛り上がった。

ヨーロッパでは英国の国民投票でBrexitが決まり、米国ではドナルド・トランプが大統領選を制した。日本では、安倍政権の長期化が続く中、舛添要一氏の失脚に伴って新東京都知事に就任した小池百合子氏が、豊洲新市場やオリンピック会場の問題に切り込んだ。

そんな激動の2016年を通じて、「働き方改革」への関心が高まったことは見逃せない。

 

本来、「働き方」は「生き方」だ。会社も個人も、政府の旗振りや電通の事件で初めて本気になるのではなく、もっと早くから目覚めねばならなかったテーマだ。長時間労働やサービス残業など、日本企業の、特にホワイトカラーの生産性の低さについては、長いこと指摘され続けてきた。

今こそ、会社等の組織は「個」に犠牲を強いるのではなく、「個」を尊重した働き方を本気で確立せねばならない。一方で、働く「個」も意識改革や行動変革に目覚める必要がある。

グーグルの「斬新な働き方」

私は、新卒で入社し22年勤めたソニーを2006年に退社した後、翌2007年4月からグーグルに入った。もともとソニーはキャラの立った「個」が活躍する会社だった。ワークステーション「NEWS」やアイボ等のロボットを立ち上げた天外伺朗氏や、ゲームビジネスを立ち上げた久夛良木健氏などの有名人も多く輩出している。

グーグルではさらに「個」の活躍が際立っていた。同社では「クラウド時代の個を尊重した働き方」を作り上げており、私自身その斬新な働き方に大きな影響を受けた。

グーグルには、「グーグリー」や「グーグリーネス」という言葉がある。「グーグルっぽい」とか「グーグルらしさ」という意味だ。いつも明るく元気で、地頭が良く、正義感に溢れ、行動力があって、コミュニケーションが上手く、頼りになる存在、とでもいうイメージだろうか。

自発的に考え、行動する「セルフスターター」が尊重され、社員には、使命感が高くアジェンダが明確な人が多かった。業務命令に従って受身で仕事をする、というスタイルは軽蔑され、「命令されて仕事をしたければ海兵隊にでも行け」と語る幹部もいたほどだ。上司の指示に従って仕事をする場合は、自分が納得するまで上司と徹底的にやり合うのがよしとされた。

インターネットやクラウドの人類への最大の貢献は、「個」をさまざまな制約から解放し、「個」の力を格段に増幅したことだ。信念や行動力のある人にとっては、自分が理不尽と思うことに我慢して従ったりマジョリティに同調したりせずとも、もっと思うように生きる新たな手段が与えられたともいえるだろう。

グーグルでは、「個」を尊重したフラットな環境の中で、権限委譲と情報の共有化が進んでおり、クラウドのリアルタイム性をフルに活かしたスピーディーなコミュニケーション、意思決定、アクションが日々猛烈な勢いで繰り返されている。

1998年の創業以来、同社が広告ビジネスの世界を根底から刷新するだけでなく、インターネットの世界を席巻し、最近ではAIなどでも世界をリードし続けているのは、「個」を尊重したスピーディーな働き方を築き上げているからだ。