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医療・健康・食

知らないと後悔する! 親が元気なうちに始めたい「介護の予習」

何に一番困るか、ご存知ですか?

親の介護を終えた後、後悔に浸る子が多いという事実をご存じだろうか? 看取った後になって、「私に十分な知識がなく、無知だったことが悔やまれます」と嘆いているのだ。

知識がなければ、もうけ主義の劣悪な介護事業者に出会ったとしても、それに対抗する術がない。また、高齢者を食い物にする無慈悲な医療の罠にも落ちてしまう。

そんな折、高齢の親を持つ子世代へ向けた『親の介護をする前に読む本』が出版され、話題になっている。本作の著者・東田勉氏が、「日本は世界一の長寿国であるのに、介護にまつわる落とし穴が多い」と警鐘を鳴らす。

なぜ、「介護の予習」をする人が少ないのか

「介護」と聞くと、誰もがいいイメージを持たないだろう。できれば、することもされることもなく人生を終えることができたらいいと思っている。亡くなる直前まで元気に活動する「ピンピンコロリ」を願う人は多い。

しかし、平均寿命は延びても、健康寿命(制限なく健康な日常生活を送ることができる期間)はなかなか伸びてくれない。両者の差は、女性で12.8年、男性で9.5年もあるのだ。

つまり、日本人は平均してこれだけの期間介護を受けることになる。

健康寿命は、女性74.21歳、男性71.19歳(2013年)だ。あなたの両親は、この年齢を超えてはいないだろうか。もし超えているとすれば、いつ要介護状態に陥ったとしても不思議ではない。まだ介護の予習をしていないあなたは、介護の負け組になる可能性に直面している。

多くの人が介護のことを考えたがらないのは、「いつか身に降りかかるにしても、イヤなことは考えたくないから後回しにしよう」と思うからだ。ところが介護は、始まってからいきなり立ち向かえるほど甘くはない。

準備の第一歩は、「その日がきたらどうしたいか」を親から十分聞き出しておくことだ。特に、「在宅か施設か」「延命を望むか望まないか」の聞き取りは欠かせない。

しかしながら日本人は、親にも子にも「まだその時期ではない」「元気なうちからそんなことを聞くなんて失礼だ」「縁起でもない」と、深刻な話題を避ける傾向がある。

 

介護はどのように始まるのか

多くの場合、介護は次の二つのどちらかで始まる。

一つ目のきっかけは入院だ。退院の時期を迎えても在宅復帰できない場合、老健(介護老人保健施設)などでリハビリをして心身の向上を図るが、それでも元へ戻らないお年寄りは多い。入院が「要介護状態の入り口」になるのだ。

二つ目のきっかけは、「在宅で自立できなくなったとき」だ。ただし、これはなかなか発見されにくい。

よくあるのは、①加齢によって虚弱になり、食事、排泄、入浴が自力でできなくなった場合と、②認知症が進行していることに周囲が気づき、慌てて受診させた場合だ。

①と②が同時に起こったケースを見てみよう。

田舎に住む80代の両親が虚弱になってきたので、都会に住む娘夫婦は、毎年のように帰省しては「そのうち引き取らないといけないね」と話しながらも、同居のタイミングを計りかねていた。

何とか老親が暮らしていけたのは、田舎の人間関係が濃密で、親切な地域住民の手助けを得ていたからだった。

ところがある年の帰省で、娘は電気釜にびっしりとカビが生えているのを発見した。浴室を調べると入浴の形跡はなく、家中のいたるところに排泄を粗相した跡があった。

ご近所に尋ねたところ、家の中が荒れていることを恥じたのか、老親は半年ほど前から隣人たちの手助けを拒んでいるという。

危ういところで都会の娘夫婦の家に引き取られた老夫婦は、「このまま死ぬのかと思っていた」と述懐した。しかし、この話はハッピーエンドに終わったわけではない。