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格差・貧困 ライフ
ぼったくり「JKビジネス」の正体〜触れず、喋らず、セックスを売る
オンナの収支報告書【7】

鈴木涼美さんが「オンナのオカネの稼ぎ方・使い方」を考察する本連載。前回に引き続き、鈴木さん自身の女子高生時代の「生脱ぎブルセラ」アルバイト体験を基に「JKビジネス」の実態を明らかにしていきます。
(バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/suzumisuzuki

 

指先ひとつ差し出さずにセックスを売る

生脱ぎブルセラの決定的な特徴は、客と女の子たちがコミュニケーションを意図的に断絶された状態にあることだ。女子高生たちは客に指一本触れず、言葉も一切交わさず、厚い鏡(マジックミラー)を隔てたこちら側とあちら側でパンツを売る/買うという関係だけが保たれる仕掛けがつくられていた。

それは援助交際や風俗や水商売と違って、ある程度「お互い様」な関係ではない。客がマジックミラーのあちら側から私たちを、無害で無邪気な存在だと認識していたように、女の子は女の子で最小限のリスクで得をしていると感じ、傷つかない、守られている、損をしていないと感じられる。

なんと言ったって指先ひとつ客に差し出さずにセックスを売れるのだ。資本主義と時代とブランドを逆手にとって、うまくやっていると感じないわけがない。

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店で商品を身につけ、値段表を安全ピンで胸にとめた後は、女の子たちは思い思いに時間をつぶし、客が来るのを待つ。約20畳ある鏡の部屋にはテレビが6台あった。うち3台はセガ・サターンのゲーム用、2台はそれぞれ、プレイステーション、地上波テレビ鑑賞のために置かれている。

最後の1台に映し出されるのは、店の入口に設置された防犯カメラの映像だ。ぼんやりと映るその映像をこっそり覗けるおかげで、女の子たちは自分の親・恋人や学校の教師が万が一来店した際に姿を隠すことができる。

その実、客のプライバシーに配慮してほとんど頭上しか映らないほど高い位置に設置されていた防犯カメラの映像は、顔が判別できるほど鮮明ではなく、もっぱら女の子が出勤してくる際にわざとカメラに顔を近づけ、鏡の部屋にいる友人に合図の遊びをするためにしか使われていなかった。

それでもそれは、顔の見えない、誰だかわからない男に一方的に見られているのではない、と感じるに値する仕掛けだった。私たちにはマジックミラーのあちら側で無防備な私たちを見ているはずの男が、実は頭上から私たちに見下されているということのおかしみにいい気になっていた。

客が店に入るとピコピコとそれを知らせるブザーが鳴り、それを聞いた女子高生たちは鏡の前に2列にならぶ。尿が出なそう、パンツを売ったばかりでまだ体臭がついていない、などの事情があれば、値段表のその商品の部分だけ内側に織り込んで客に見えないよう準備した。

前の列の女の子は座り、後ろの列の女の子は立って、全員の顔が鏡に映る。客が入場料を支払い、マジックミラーのあちら側の部屋にはいる段階になると、男性店員が「お客様が鑑賞室に入られます、女の子はマジックミラーの前に並んで自分の目をまっすぐ見てください」と放送する。

女の子たちは鏡に映る自分の目を見て、にっこり笑顔をつくる。女子高生はただでさえ1日何度もラブ・ボートやマリー・クワントの鏡で自分の顔を見つめる。鏡に映る自分の顔を見てじっとしている時間は、何の苦にもならなかった。

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